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    ブレードランナー / Blade Runner
    ● ブレードランナー / Blade Runner [アメリカ / 香港 / 1982年]

    b0055200_473380.jpg荒んだ近未来を先駆的に描き、愛や命の尊厳を語り、業界内外に大きな影響を与えたSF作品のひとつ。陰鬱で暗調な作品のムードゆえ、賛否を生み、観る人を選ぶ可能性も否めないが、情緒を揺さぶる物語の奥行きが見事。個人的な作品の心象は"美しい"に尽く。



    監督は、「エイリアン」「グラディエーター」のリドリー・スコット。原作は、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。「リック・デッカード」役には、"インディ・ジョーンズ"シリーズのハリソン・フォード。「ロイ・バッティ」役には、「ヒッチャー」のルトガー・ハウアー。「レイチェル」役には、「追いつめられて」のショーン・ヤング。「ガフ」役には、「落ちこぼれの天使たち」のエドワード・ジェームズ・オルモス。「ブライアント」役には、「新・猿の惑星」のM・エメット・ウォルシュ。「プリス」役には、「スプラッシュ」のダリル・ハンナ。「リオン」役には、「48時間」のブライアン・ジェームズ。

    "Man Has Made His Match... Now It's His Problem"
    地球環境の悪化により、人類の安住のため宇宙開拓が進む。遺伝子工学の分野では技術躍進が巻き起こり、"レプリカント"と呼ばれるヒューマノイドの開発に成功していた。人間と見分けが付かないが、肉体を強化され、感情を排除された彼ら"レプリカント"は宇宙開拓の前線で過酷な作業を強いられる。しかし、技術の誤算は、時の経過と共に"レプリカント"にも感情が芽生えてしまうことであり、時として人間に牙を向く"レプリカント"も現れた。この"レプリカント"問題を受け、地球に潜伏し、人間に危害を与える恐れのある"レプリカント"を処罰するため、"ブレードランナー"が結成された。2019年11月、ロサンゼルス、"ブレードランナー"をリタイアした「デッカード」が、過去に彼の上司であった「ブライアント」から突然召還される。"レプリカント"開発に深い関連のあるタイレル社にて、"ブレードランナー"である「ホールデン」が、従業員にフォークト・カンプフテストを実施の際、突然、その従業員「リオン」に殺害されてしまったのであった…。


      原作は、「トータル・リコール」で映画化された『追憶売ります』、「マイノリティ・レポート」で映画化された『少数報告』など、数々の名SF小説を生んできたフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』。成功とは言えぬ公開初期の興行結果もあって、カルト・ムービーと称される一方で、1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。荒んだ近未来を先駆的に表現し、メランコリックな未来都市というモチーフは様々な作品に応用されることになる。

      本作が業界では高い評価を受けていながらも、リドリー・スコットが展開した世界観や作品に与えたテーマ性は、数あるSF作品の中でも特異であり、観賞者レベルでは賛否両論が巻き起こっている点が面白い。本作の世界観は、陰鬱で暗調であり独特の雰囲気を醸成しているものの、見方によっては不気味だ。ヒューマノイドと人間の対峙が大筋であるものの、愛や命の尊厳に焦点を当てたメッセージ性の強い作品となっているため、スリルやアクションを期待していると肩透かしを喰らったような印象を抱く可能性も否めない。こうして、感受の表裏一体と言うべきか、本作は独特のバランス感覚で描かれた作品なのである。

      個人的な作品に対する心象は、"美しい"という言葉に尽きる。それは、優美であり悲壮美でもある。優美は、世界観に帯びている。前述の通りに、本作が描く未来都市は陰鬱で暗調であり、例えば清潔さや鮮麗さといった、いわゆるクリーンなイメージとは一線を画した描き方をされている。しかし、この雨の重たい湿気のような身体にまとわり付く息苦しさは、エピローグにいたるまで一貫されており、奇奇怪怪で、ある意味では不気味なのだが、グイグイと引き込まれるような不思議な優雅さがある。

      悲壮美は、物語に帯びている。"レプリカント"対"ブレードランナー"という構図の中で、愛や命の尊厳が描かれているが、この語り口が切なくも美しい。"レプリカント"の登場たるものは凶悪性が先行して描かれ、勧善懲悪のシンプルな活劇かと思いきや、次第にその境界線が滲み出し、やがて有耶無耶になっていく。「デッカード」はなぜ"ブレードランナー"をリタイアしたのか、「ロイ」を筆頭とした"レプリカント"達はなぜ地球に帰還したのか、「レイチェル」が流す涙の意味とは何か。非現実的な物語でありながらも、作品の主張は観る者の心に訴えかけ、その解釈を委ねてくる。人間の傲慢さや技術発展の憂鬱などといった皮肉はなく、純粋に"生"の意味の問うてくる。完全なSFでありながらも、哀愁や深慮を作品に与えるという芸当は、リドリー・スコットだから成しえるのだろう。

      こうして作品は情緒を揺さぶる奥行きを持っている一方で、「ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版」や「ブレードランナー ファイナル・カット」と再編集が施されている。、ユニコーンは何を意味するのか、本作とキューブリックの意外な接点とは何か、妖しげな日本食屋台で「デッカード」は何を注文し、店主から『2つで十分』と説得されているのか、物語の背景を根底から覆すような推測が成り立ったり、マニアックなディテールの謎が解き明かされたりと、再編集作品をまたいで伏線が張り巡らされていることも興味深い。本作が投じた水滴は大きな水紋となって、今後も永く語り継がれていくように思う。

    ● 関連作品 ※レビュー対象外
    ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版 / Blade Runner: The Director's Cut
    ブレードランナー ファイナル・カット / Blade Runner: The Final Cut

    ● 製作代表 : The Ladd Company
    ● 日本配給 : Warner Bros.
    ● 世界公開 : 1982年06月25日 - アメリカ
    ● 日本公開 : 1982年07月03日
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    by movis | 2009-01-12 04:16 | SF