人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Top
MOVIS
one for all, all for one
Will Be Next to ...
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 1st season
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 2nd season
  • アマルフィ 女神の報酬
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 1st season
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 2nd season
  • インセプション
  • 最近のエントリ
    検索
    カテゴリ
    タグ
    タイトル別カテゴリ
    ■ 音順カテゴリ


    ■ 特集
    映画で音楽を聴く

    ■ 公開年度別カテゴリ

    sorry...
    restorin' soon ...
    最新のトラックバック
    フォロー中のブログ
    その他のジャンル
    ファン
    記事ランキング
    ブログジャンル
    画像一覧
    リンク
    ラスベガスをぶっつぶせ / 21
    ● ラスベガスをぶっつぶせ / 21 [アメリカ / 2008年]

    ラスベガスをぶっつぶせ / 21_b0055200_15322411.jpg原作はジェフ・マーという実在の人物の体験がモチーフになっている『ラス・ヴェガスをブッつぶせ!』。MITの学生が"ブラックジャック"で勝ちまくるという夢のような物語。軽快でスタイリッシュでミスディレクションもあり。娯楽作品としては、なかなかの満足感だった。



    監督は、「キューティ・ブロンド」のロバート・ルケティック。「ベン・キャンベル」役には、「ブーリン家の姉妹」のジム・スタージェス。「ジル・テイラー」役には、「ビヨンド the シー ~夢見るように歌えば~」のケイト・ボスワース。「ミッキー・ローザ」役には、「アメリカン・ビューティー」のケヴィン・スペイシー。「コール・ウィリアムス」役には、"マトリックス"シリーズのローレンス・フィッシュバーン。「チョイ」役には、「ディスタービア」のアーロン・ヨー。「キアナ」役には、「ドミノ」のライザ・ラピラ。「ジミー・フィッシャー」役には、ジェイコブ・ピッツ。

    "Inspired by the true story of five students who changed the game forever."
    「ベン」は内向的で人付き合いも苦手だが、SAT1,590点、MCAT44点、GPAスコア4.00を取得し、MIT(マサチューセッツ工科大学)卒業後は名門ハーバート大学医学部への入学が決まっている優秀な大学生だ。しかし、母子家庭に育った彼には、30万ドルという入学金が大きな障壁となっていたのだった。アルバイトの給料では到底及ばず、彼は"ロビンソン・スカラシップ"獲得を目指す。面接官に与えられた課題に「ベン」は頭を悩ませる。それは、他人にはない独自の、特別な経験談をアピールすることだった。図書館で勉強に励む「ベン」は、突然「フィッシャー」という生徒から声をかけられ、薄暗い教室を訪ねる。そこにいたのは「ベン」が履修している数学クラスの教授「ミッキー」、憧れの女学生「ジル」、そして「チョイ」、「キアナ」。彼らの眼前に並ぶカード。「ベン」は、ブラックジャック必勝法(カード・カウンティング)の研究に招かれたのだった…。


      いくら優秀な生徒が集うMITの学生だからと言って、こんな夢物語が現実にあるわけがないと思いがちだが、驚くべきことにベン・メズリックによる原作『ラス・ヴェガスをブッつぶせ!』は、1990年代、MIT"ブラックジャック・チーム"に所属していたジェフ・マーという実在の人物の体験を基に執筆された作品だ。本作では「ベン・キャンベル」のモデルとなった彼だが、"プラネット・ハリウッド・リゾート・アンド・カジノ"のディーラー「ジェフリー」役として、カメオ出演を果たしている。原題の"21"とは、ブラックジャックというカードゲームの最強の手のこと。ディーラーとプレイヤーは"21(ブラックジャック)"を超えない範囲の高得点を競い合う。配られた2枚のカードのポイントを"21"に近づけるため、"ヒット"(1枚カードを引く)と"スタンド"(カードを引かず、そのポイントで勝負する)を繰り返す。

      ジェフ・マーとMIT"ブラックジャック・チーム"のエピソードは、原作に限らず、これまでもさまざまなメディアで取り上げられてきた。事実を紹介するだけであれば、必ずしも彼らの成功の要因や背景の詳細にまで言及する必要はなく、サマリーを述べておけば良いので造作はないだろう。ところが、この手のエピソードの映画化が難しいのは、限りのある上映時間という枠の中で、物語の前提をある程度理解している観賞者の期待と、そうでない観賞者の期待とを相手にしなければならない点である。つまりは、本作においては物語のキーワードとなってくる"カード・カウンティング"というテクニックをどこまで観賞者に粗なく説得できるかが重要となる。この観点から作品を評価すれば、物語をスタイリッシュかつクールに魅せておきながら、ロジックの整合性を蔑ろにしていることもないので、娯楽作品としては高ポイントを得ても不思議はない。若干、理屈っぽい印象も否めないが、そこは愛嬌と思えるほどにプロットは推敲されていたように思う。こうした土台の上に、物語の見所は乗っている。

      ひとつは、内向的で生真面目でサブカルチャーに興じる「ベン」が、"ブラックジャック・チーム"に所属したことで何を得て失って、どう変わっていくのか、ドラマとしての側面である。そもそもチームへの入会動機は、学費のため、憧れの女学生「ジル」がいるため、であった。どうやら、本当に"カード・カウンティング"はいい稼ぎになりそうだし、話かけることすら出来なかった「ジル」とも言葉を交わせるようになってきた。次第に「ベン」が変貌していく様子は、独特のスピード感があって爽快であるが、ジム・スタージェスにも「ベン」にも"ダサさ"がないために、メリハリには欠けたか。序盤で描かれる「ベン」の温かみが、終盤に向けて影を潜めてしまう点も残念。

      次に、「ミッキー」を筆頭とした"ブラックジャック・チーム"の面々と、カジノの保安要員「コール」の対峙、そこに潜んだ黒い影の正体とは何か、サスペンスとしての側面である。一度に多額は勝ち取らない、慎重なプレーを続ける"ブラックジャック・チーム"に、なぜベテラン保安要員「コール」は疑念を抱くのか。"カード・カウンティング"を知る「コール」がなぜプレイヤー側に回らないのか。監視システムが強化され、役目を追われつつある「コール」のプライドとは何か。作品に意外性がある、という言い方をすればキーパーソンは彼だ。「ベン」の存在を喰わんばかりのエピローグは大いに一見の価値ありだ。

      モチーフが実在の人物にあるとはいえ、その真偽が判断つかぬほど破天荒なストーリーを備えた本作であるが、軽快なテンポと鮮やかなカメラワークが手伝って、気軽に観賞する上ではなかなかの満足感を与えてくれる作品であった。多額の紙幣が飛び交うが、心底羨ましくはない。ギャンブルはほどほどに。

    ● 製作代表 : Columbia Pictures
    ● 日本配給 : Sony Pictures Entertainment
    ● 世界公開 : 2008年03月07日 - アメリカ(South by Southwest Film Festival 2008)
    ● 日本公開 : 2008年05月31日
    by movis | 2009-01-17 15:38 | ドラマ