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    ウォーリー / WALL・E
    ● ウォーリー / WALL・E [アメリカ / 2008年]

    b0055200_1225492.jpgさすがはピクサー、さすがはスタントン、ロボットの所作を手掛けても可愛らしく演じさせてしまう。虚しい未来に輝く、あまりに眩しく、あまりに純粋なロボットのラブ・ストーリー。『本作は傑作』と胸を張って伝えられる。どこかで本作に感じる不思議な"違和感"の正体とは…。



    監督は、「レミーのおいしいレストラン」のアンドリュー・スタントン。「WALL・E」と「M・O」の声の担当には、ベン・バート。「EVE」の声の担当には、エリサ・ナイト。「マクレア」の声の担当には、ジェフ・ガーリン。「シェルビー・フォースライト」役には、フレッド・ウィラード。「ジョン」の声の担当には、ジョン・ラッツェンバーガー。「メアリー」の声の担当には、キャシー・ナジミー。「アクシオム・コンピュータ」の声の担当には、"エイリアン"シリーズのシガーニー・ウィーヴァー。

    "An Adventure Beyond the Ordinar-E"
    時は29世紀。人間たちが、汚染し尽された地球を捨て、新たな入植地を求めて宇宙船"アクシオム艦"で飛び立ってから700年もの歳月が経とうとしていた。荒廃し、砂ぼこりが舞い上がる不毛の地で、せっせとゴミを片付けるロボットがいた。彼の名前は「WALL・E(ウォーリー)」。仲間たちは皆壊れてしまい、唯一相棒と呼べるのはゴキブリの「HAL(ハル)」だけ。ゴミの中からお気に入りのガタクタを見つけることが楽しみで、古びた『ハロー・ドーリー!』のフィルムを見ては、人恋しさを募らせる寂しい日常を繰り返した。ある日、突然、上空から巨大な宇宙船が降りてきた。そこから降ろされたのは、丸みを帯びた白く輝くロボットで…。


      「レミーのおいしいレストラン」や「ファインディング・ニモ」を手掛けた、アンドリュー・スタントンが送るファンタジー・アニメーション。孤独な生活を送ってきた男の子という設定の「WALL・E」と、とある目的の為に地球に降ろされた女の子という設定の「EVE」の交流を描く。

      「WALL・E」と「M・O」の声を担当したベン・バートの本職はサウンド・デザイナーであり、本作でも音響エンジニアを兼務している。彼は、2005年5月にピクサー社に籍を置くまでは、28年間ルーカスフィルムに在籍し、"スター・ウォーズ"シリーズではお馴染みの「R2-D2」や「チューバッカ」の声から、ライトセイバーの効果音にいたるまで、音響界では巨匠と呼ばれるような功績を残してきた。スタントンは最新型ロボットという設定を与えた「EVE」のデザインを、iPodのデザインを担当したジョナサン・アイヴに依頼し、彼も快諾したという。加えて、スティーヴ・ジョブスを巡るピクサー社とアップル社の深い関係性は、「WALL・E」の起動音がマッキントッシュの効果音であったり、「WALL・E」がiPod nanoを使っているシーンにも表れている。物語はさておき、製作の背景が面白い一作でもある。

      さすがはピクサー製作とアンドリュー・スタントン、「WALL・E」と「EVE」を筆頭として劇中に登場するロボットの所作は、思わず目を細めんばかりに可愛らしい。「トイ・ストーリー」は例外として、スタントンはロボットというモチーフを初めて採用したが、無機質なキャラクターにも温かい感情を与え、彼のファンの期待を裏切らない出来であると言えよう。ところが、これまでのスタントンの作品と比較すると、不思議な違和感を得る作品である。爽やかなファンタジーであって、余韻には文句なく感動や解放感が帯びているにも関わらず、どこかでアンニュイが禁じえない。ある意味では、スタントンが製作総指揮を担当し、本作と同時上映される「マジシャン・プレスト」のほうが余程"らしい"とさえ思ってしまうのである。

      例えば、"BNL(Buy N Large)社"の創設者「シェルビー・フォースナイト」は、アニメーションでなく、フレッド・ウィラードその人の演技、つまり作品には唯一であるものの、生身の人間が登場すること。例えば、ようやくお家芸の"人間らしさを捨てた人間"が登場するものの、その造形に思わずギョッとしてしまったこと。「WALL・E」が生きる街はファンタジーらしからず荒廃していて埃っぽく、キャラクター動作の神がかったテンポも潜んでしまっている。この、これまでのスタントン作品との"何かが違う"という違和感は、現実味を持って地球の行く末を絶望的に暗示されているからのように思えてならないのだ。

      臆病で内気な「WALL・E」は、短い時間ながらも「EVE」と過ごした時が新鮮で、ひとりぼっちには戻りたくなくて彼女を懸命に追いかける。「EVE」は時々任務の邪魔をする「WALL・E」を疎ましく思いながらも、次第に彼の純心に惹かれていく。目標を失った未来人たちは、変わり映えのしない一定の生活を送っている中、この「WALL・E」と「EVE」の純愛に、忘れていたはずの何かを蘇らせていくのだ。違和感のあるどこか現実味のある世界観の絶望の中で、ロボットの純愛があまりに眩しく、やがて希望となっていく。『生き残るより、生きたいんだ』という台詞が心を掴んで離さない。

      絶望と希望のコントラストは見事なほど鮮やかに映えていたが、観賞後に感じた最後の違和感は、これほどメッセージが鋭い作品がスタントンやピクサーの作品にあっただろうか、という点だ。地球環境の悪化や世界情勢の傾斜が憂鬱な昨今、そこに希望や深慮を与えんとする作品が増えてきているなか、スタントンやピクサーにおいても新境地を開拓し、人々に活力を与えんとしているのか。それが図星か、私の過慮なのか、そこに答えはないが、絶対であるのは「WALL・E」と「EVE」の純愛に、身が震えたということ。本作は、もしかすると子供には少し難しいかもしれないし、もしかすると大人にはもっと難しいかもしれない。しかし、観て損は有り得ないはずだ。お世辞なし、正直な胸の内、本作は傑作だ。

    ● 関連作品 ※レビュー対象外
    マジシャン・プレスト [2008年]
     → 「ウォーリー」と同時上映。ショートアニメーション。

    ● 製作代表 : Pixar Animation Studios
    ● 日本配給 : Walt Disney Studios Motion Pictures
    ● 世界公開 : 2008年06日23日 - アメリカ(ロサンゼルス/プレミア)
    ● 日本公開 : 2008年12月05日
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    by movis | 2009-01-24 12:35 | アニメーション