人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Top
MOVIS
one for all, all for one
Will Be Next to ...
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 1st season
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 2nd season
  • アマルフィ 女神の報酬
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 1st season
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 2nd season
  • インセプション
  • 最近のエントリ
    リンク
    ダージリン急行 / The Darjeeling Limited
    ● ダージリン急行 / The Darjeeling Limited [アメリカ / 2007年]

    ダージリン急行 / The Darjeeling Limited_b0055200_1693019.jpg家族の絆をテーマに、気持ちが擦れ違った3人の男兄弟がインドを旅するヒューマン・コメディ。彼らの珍道中の様子は果てなくゆるい。シリアスな展開もありながら、そっと心を洗ってくれるような温かさもある。風変わりだが、どこか憎めない不思議な作品であった。
     


    監督は、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン。「フランシス・ホイットマン」役には、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「アルマゲドン」のオーウェン・ウィルソン。「ピーター・ホイットマン」役には、「レストラン」「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ。「ジャック・ホイットマン」役には、「天才マックスの世界」「ハッカビーズ」のジェイソン・シュワルツマン。「パトリシア・ホイットマン」役には、「女と男の名誉」のアンジェリカ・ヒューストン。「リタ」役には、アマラ・カラン。「アリス」役には、カミーラ・ラザフォード。「ブレンダン」役には、ウォレス・ウォロダースキー。ワリス・アルワリア、イルファン・カーン、バーベット・シュローダー、ナタリー・ポートマン、ビル・マーレイらの出演も。

    "あした、僕たちはどこにいるんだろう..."
    インド北西部を走る"ダージリン急行"が駅のホームを離れて速度を上げる。これに乗り遅れんとホームを駆ける「ビジネルマン」。さらに彼の後を追う「ピーター」。呆然と列車を見送る「ビジネスマン」を横目に、「ピーター」は何とかキャビンに転がり込んだ。「ピーター」を出迎えたのは、「ホイットマン」3兄弟の末っ子「ジャック」だった。3兄弟は父親の死をきっかけに絶交状態であったが、長男「フランシス」が兄弟の絆をとりもどすため、こうしてインドの地に弟たちを呼び出したのだった。彼らの日常は順風満帆とは言いがたい。忠実な助手「ブレンダン」を連れている長男「フランシス」はバイク事故で重傷を負い、奇跡の生還を果たすものの頭に巻かれた包帯が痛々しい。父の遺産を独り占めするな、と「フランシス」から詰め寄られている次男「ピーター」は、妊娠7ヶ月半の妻がいるものの価値観の違いから離婚を考え始めている。自らの家族をネタにした『ルフトヴァッフェ修理工場』という小説を書き上げた、作家の三男「ジャック」は失恋したばかりだ。兄弟の絆を取り戻す、という目的がある旅行であるにも関わらず、1年の期間を空けての再会は穏やかであるわけもなく…。


      活躍が期待される若手監督ウェス・アンダーソンは、「フランシス」役として本作にも出演しているオーウェン・ウィルソンと関係が深い。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」では共に2001年第74回アカデミー賞の脚本賞ノミネートを受けている。本作は、オーウェン・ウィルソンに加え、「天才マックスの世界」でウェスと仕事を共にしたジェイソン・シュワルツマンと、「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディを迎え、インドの地を舞台にした男三兄弟の珍奇な旅が描かれている。どこかズレていて、果てしなくゆるい。取り留めもないが、それが癖になりそうな作品であった。

      何よりもまず色彩とアイテムの可愛らしさに目を奪われる。インドという舞台を、多少は偏ったデザインで描いているのだろうけれども、赤、橙、黄色などの暖色で彩って、エキゾチックで解放的に魅せている。これはミレーナ・カノネロら著名な美術クリエイターの成せる業。「ホイットマン」3兄弟の旅を眺めながら、自身の旅情をそそられるようであった。そして本作でもっとも印象的なアイテムが、マーク・ジェイコブスが直々にデザインしたヴィトンのスーツケース。「ホイットマン」3兄弟が両手いっぱいに抱えたスーツケースには何が詰まっているのか。ウェスが本作で描きたいメッセージのひとつが、このアイテムに隠されている。
      
      兄弟のはぐれた絆を取り戻す、という名目のインド旅行には、生き別れた彼らの母親に会うという目的も潜んでいる。3人の男のゆるい珍道中に終始するかと思いきや、意外にもシリアスな展開が待っている。ウェスのこれまでの作品でも観られたような"家族の大切さ"が語られるわけだが、どうも彼の作品の語り口はシャイなのか素直じゃないのか、不器用さを感じ得る。それはまさに「ホイットマン」3兄弟の気持ちの通い合いの様子そのままで、でもどこかいじらしく憎めないのだ。その3兄弟を演じる、オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマンという面々は兄弟という設定が無謀とも思えるキャスティングだが、これもなかなか味わい深い。それぞれが異なる心と強い個性を持つ男たちが、何をキッカケに、どういった過程で絆を取り戻していくのか。珍道中の終わりは、独特のカタルシスを以って描かれる。
      
      ウェスの音楽の選び方もセンスが光る。「Peter Sarstedt」、「The Kinks」、「The Rolling Stones」らの楽曲を巧みに使いながら、ロードムービーとしての本作全体を盛り上げていく。そういった意味では、本作をBGMの代わりに観賞するのもオススメ。家族というテーマがあり、シリアスな展開があるにしても、やはり「ホイットマン」3兄弟の珍道中はゆるい。彼らの絆に涙を誘われても良し、インドの情緒に魅了されても良し。癖があって風変わりだが、そっと心を洗ってくれるようなヒーリングを備えた、性格の面白い作品だ。
     
    ● 関連作品 ※レビュー対象外
    ホテル・シュヴァリエ [2007年]
     → 「ダージリン急行」本編上映前のプロローグ作品。
     
    ● 製作代表 : Fox Searchlight Pictures
    ● 日本配給 : 20th Century Fox
    ● 世界公開 : 2007年09月29日 - カナダ
    ● 日本公開 : 2008年03月08日
    by movis | 2009-06-21 16:17 | コメディ