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    頭文字D The Movie / Initial D
    ● 頭文字D The Movie / Initial D [香港 / 中国 / 2005年]

    頭文字D The Movie / Initial D_b0055200_1303910.jpg漫画家、しげの秀一による同名コミックシリーズを"インファナル・アフェア"のキャストとスタッフが実写化。映像技術に頼ることなく、実際のカーアクションによる公道バトルの様相は期待以上のもの。しかし、どうしても短尺で描かれるためにジレンマがある。



    監督は、"インファナル・アフェア"シリーズのアンドリュー・ラウとアラン・マック。原作は、"頭文字D"シリーズのしげの秀一。「藤原拓海」役には、ジェイ・チョウ。「茂木なつき」役には、鈴木杏。「藤原文太」役には、"インファナル・アフェア"シリーズのアンソニー・ウォン。「高橋涼介」役には、"インファナル・アフェア"シリーズのエディソン・チャン。「中里毅」役には、"インファナル・アフェア"シリーズのショーン・ユー。「立花樹」役には、"インファナル・アフェア"シリーズのチャップマン・トー。「立花祐一」役には、ケニー・ビー。「須藤京一」役には、ジョーダン・チャン。「岩城清次」役には、リュウ・ケンホン。「健二」役には、阿部力。

    "It's not what you drive, it's what drives you"
    "藤原とうふ店"を営む「藤原文太」を父に持つ高校生「藤原拓海」。家業を助けるため、「拓海」は毎日早朝から「文太」の車を駆り、"秋名山"の頂上にある旅館に豆腐を届けた。豆腐は脆く、壊れやすい。「拓海」は常々「文太」から豆腐を崩すな、と忠告を受けた。「拓海」は父の忠告を守りながら、それでも早く帰宅したい一心で、配達に要する時間を削っていく。それが「文太」の"教育"であることなど彼は知る由もなかった。「拓海」と友人「樹」がアルバイトをしているガソリン・スタンドに、"妙義山"をテリトリーとする走り屋集団"妙義ナイトキッズ"の「中里毅」が駆る日産・R32スカイラインGT-Rが現れる。「中里毅」の挑発に乗った「樹」は、「拓海」を助手席に乗せ、"秋名山"で公道バトルに挑むが結果は惨敗。意気揚々の「中里毅」であったが、その晩、峠を信じがたい速度で攻め込むトヨタ・AE86スプリンタートレノに遭遇する…。


      漫画家、しげの秀一による原作"頭文字D"は、公道での自動車レースに凌ぎを削る若者たちを描いた作品。走り屋の行為に興味のなかった平凡な高校生「藤原拓海」が、ひょんな出来事から公道バトルに魅了され、やがて"公道最速"を志していく。「拓海」が駆るトヨタ・AE86スプリンタートレノ、通称"ハチロク"は、非力でありながらも、癖のない優れたレスポンスと、軽量な車両重量による抜群のスタビリティによって、ダウンヒルでは、パワーのある自動車を相手にしない。このコミックの影響もあって、"ハチロク"は80年代後期のモデルであるにも関わらず、一部の自動車ファンたちの間では根強い人気を誇っている。実写化に挑むのは、"インファナル・アフェア"シリーズのアンドリュー・ラウとアラン・マック。加えて、本作にはアンソニー・ウォン、エディソン・チャン、ショーン・ユーら、"インファナル・アフェア"シリーズの主演陣が集った。
     
      まず、原作のファンを安心させる、もしくは彼らの期待に応えてくれそうな本作の要素は、公道を攻め込む自動車が原作に忠実に、そして圧倒的なスピード感と迫力を帯びて描かれている点であろう。「拓海」の"ハチロク"、「中里毅」のR32スカイラインGT-R、「高橋涼介」のマツダ・RX-7(FC3S)、「須藤京一」の三菱・ランサーエボリューションIIIGSRなど、原作でも存在感たっぷりに描かれる自動車がほぼそのままに登場する。こうした名車が劇中で魅せるテクニックは、映像技術に頼ることなく「タカハシレーシング」による実際のカーアクションであるというのだから、その驚愕の挙動には原作のファンのみならず、自動車ファンには悦喜の極みに違いない。また近接、遠隔と切り替わるカメラワークが巧妙で、めまぐるしいレースシーンもただ疾走感に身を任せていられるのが快い。ガードレールをなでるようにテールを流す"ハチロク"の様子は、躍動感がある原作を読むとき以上にハラハラとした。レースの舞台となる、夜の帳が降りた峠の描写も幻想的で美しい。目に映るものは、申し分なく楽しめる。
      
      作品として本作を観る。"インファナル・アフェア"のキャスト、スタッフによる実写化であるから、物語の舞台が日本であるにも関わらず、日本語が聞こえてこないという違和感を訴えるのは野暮だろうが、長編の原作を短尺で映像化する作品にありがちなジレンマは本作にもある。例えば「拓海」と「茂木なつき」のエピソードなどは、もう少し核心が語れるべきであった。しかしながら、そうしたエピソードに対する説明や説得の不足感を禁じえないにしても、「文太」や「樹」に見られるように原作のキャラクターの性格を大幅に変更してみたり、原作のキーマンのひとりであり「高橋涼介」の弟である「高橋啓介」を登場させない、といった大胆な設定がありながら、"頭文字D"という作品のおいしいところは上手く表現されたか。

      著名な原作が映像化されるときほど、作品の評価は厳しくなりがちであるが、本作は映像の迫力を以ってファンの期待に応えてくれるだろう。加えて、原作を知らなくてもそこへの興味を煽っていくだけの魅力も兼ねているように思う。苦言を呈せば、後者は良くても、前者、原作のファンに二度三度と観賞させたいと思わせる、映画作品としての独自性やレゾンデトールには乏しい。アイデア自体を原作に踏襲した上で、全く独立した物語を見せてくれれば…。キャストとスタッフを眺め見て、勿体なさを禁じえなかった。何がそれほど不満かと言えば、正直な胸の内は、サンバーストイエローのマツダ・RX-7(FD3S)が見たかっただけなのだけど…。
       
    ● 製作代表 : Media Asia Films
    ● 日本配給 : GAGA Communications
    ● 世界公開 : 2005年06月23日 - 中国/香港/シンガポール
    ● 日本公開 : 2005年09月17日
    by movis | 2009-06-28 01:37 | アクション