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    アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ
    ● アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ / Senna [イギリス / 2010年]
      
    今や伝説のFormula-1ドライバーとして名高い「アイルトン・セナ」のレース生涯を追うドキュメンタリー。「セナ」ファン、モータースポーツファンには是非見てほしい貴重な一作。優しい表情でされど飄々とトロフィーをかっさらった「セナ」、その裏の人間臭さが本作に溢れている。
      
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    監督は、アシフ・カパディア。使用映像の登場人物には、アイルトン・セナ、アラン・プロスト、フランク・ウィリアムズ、ロン・デニス、ネイジ・セナ、ミルトン・ダ・シルバ、ヴィヴィアーニ・セナ、ジャッキー・スチュワート、シド・ワトキンス、リチャード・ウィリアムズ、ゲルハルト・ベルガー、ネルソン・ピケ、ナイジェル・マンセル、マーティン・ドネリー、ローランド・ラッツェンバーガー、ジェームス・ハント、ジャン=マリー・バレストル、バーニー・エクレストン、パトリック・ヘッド、ルーベンス・バリチェロ、デーモン・ヒル、ミハエル・シューマッハ、アドリアーネ・ガリステウ、今宮純、川井一仁、三宅正治、岡田美里ら。

    "The legend of the greatest driver who ever lived."
    かつてFormula-1にその名を轟かせた名ドライバー、「アイルトン・セナ」。慈善団体"アイルトン・セナ財団"の公認のもと、「アイルトン・セナ」生誕50周年を記念に製作された彼のドキュメンタリー作品。1970年代後半のカートでのキャリアから、1984年のFormula-1デビュー、1994年のイモラでの事故死に至るまでを、関係者のインタビューや秘蔵映像で振り返る。

     
      Formula-1にあまり関心のない人間であっても「アイルトン・セナ」と聞いて浮かべるイメージに、事実はそう間違ったものでもないだろう。それほど高い知名度を誇り、世界から愛された「アイルトン・セナ」は、本作では終始、物憂げな表情であった。これは私にとってはショックだった。当時から、私にとって「セナ」は英雄であり、まるでロボットのように飄々と勝ち続ける様に人間臭さは一切感じ得なかったからだ。そもそも、レースにスリルと興奮を求めるだけで、その表情を見落としていただけだろうか。「セナ」は自分に神が付いていると思っている。「セナ」は自分が死なないと思っている。「アラン・プロスト」が現役時代から常々「セナ」の無謀なドライビングを強く批判したことは有名だ。しかし、本質はどうだったであろうか。大胆の裏に秘めた繊細な一面。人間「アイルトン・セナ」が溢れた本作は、2011年サンダンス映画祭にて、ドキュメンタリー部門観客賞を受賞した。
      
      1994年5月1日、Formula-1世界選手権第3戦サンマリノGP。イモラサーキットでの7周目に起きた出来事は、F1界、モータースポーツ界に留まらず、全世界に悲しみをもたらした。「アイルトン・セナ」は34歳という若き生涯を終えるまで、とにかく勝ちまくった。当時のフォーミュラ・カーのドライビングは属人傾向が色濃く、とにかくドライバーの腕が試された。「セナ」はレコードラインを果敢に攻め、ラップを刻み、マシンがアンダーステアでコースから逃げ出そうとしても、オーバーステアでアグレッシブな状態になろうとも、美しいまでのドライビングでレースをまとめあげた。マシンの開発、機能向上にも積極的に参画し、ロン・デニスとともにマクラーレン・ホンダの黄金期を築き上げた。ピュアにレースを愛する姿勢は多くのモータースポーツファンを虜にしたが、それ以上に、不安定な内政が続いた「セナ」の祖国、ブラジルの国民にとって、彼は生きる希望であり、そして神にも等しい存在であった。
       
      プロローグとエピローグ、過去を振り返った質問を受けて「セナ」は1978年、1979年に戻りたいと答えた。政治も金もない、ただ純粋にレースを楽しめていた頃に。優男のような淡麗な風貌でありながら、レースともなるとアグレッシブを極めた。学業も疎かにせず、レースにおいても賢明を発揮する「セナ」であったが、世渡りは不器用だった。互いが頑固な信念を貫くゆえに生まれてしまう、チームメイト「アラン・プロスト」との確執は、エンターテイメントとしてのFormula-1を大いに沸かせ、私もそれを楽しんだクチだけれども、内情はシリアスを極めていた。Formula-1の政治を理解し、うまく立ち回る「プロスト」との対立は、まるで精巧なドラマを観ているようであった。Formula-1も時代が遷ろう。1992年、名門ウィリアムズがトラクション・コントロール機構や電子サスの導入に踏み切ったことを皮切りとして、フォーミュラ・カーにも電子制御の波が訪れる。そして、ホンダのエンジン供給撤退。「セナ」は、自分が追い求めてきた純粋なレースをすることの楽しさと現実とのギャップに苛まれ、葛藤を繰り返しながら、それでも世間には笑顔を振りまいて観客を沸かした。
      
      2011年5月1日現在、ちょうど17年前のこの日「セナ」はこの世を去った。そもそも、1994年シーズン第3戦は荒れた。同郷であり、インタビューでは「セナ」と隣り合って緊張を隠せぬ初々しい「ルーベンス・バリチェロ」が金曜日のプラクティスでマシンを浮かせる大クラッシュを起こせば、土曜日の公式予選ではマシンの不調に不安を露わにしながらコースに出た「ローランド・ラッツェンバーガー」が事故死した。本編終盤には、当時のフジテレビの生中継映像も使用されている。「川井一仁」がこう伝えた。日曜日決勝のパドックで「セナ」に出場の迷いが見えたような気がする、と。また、DVD/Blu-ray初回限定盤の特典インタビューにて「プロスト」は、「セナ」が当日のイモラのスクリーンに、「プロスト」を想うメッセージを映し出していたことを告白する。幾度とぶつかった彼との付き合いの中で最も嬉しかったとも、今となってはなぜそのような演出をしたのか分からないとも。「セナ」はあの日何を思っていただろうか。何も分からないまま、彼と、彼を取り巻いたエピソードは神格化されていく。彼はFormula-1から人間としてたくさんを学んだと語った。私はそんな「セナ」から初志や信念を体現し、貫いていくことの美しさを学んだ。
       
    ● 製作代表 : Universal Pictures
    ● 日本配給 : 東宝東和
    ● 世界公開 : 2010年10月07日 - 日本(鈴鹿サーキット/プレミア上映)
    ● 日本公開 : 2010年10月08日

    (2011/05/14: 出演者情報 追加/修正、本文 修正)
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    by movis | 2011-05-01 21:15 | ドキュメンタリー