● バニシング・ポイント / VANISHING POINT [1971年]
西海岸を目指して、チャレンジャーを駆り続ける1人の男。何のために走るのか。何のために急ぐのか。仕事か。反抗か。意地か。使命か。シンプルなのに、渋くて、かっこ良くて、浪漫を感じる作品だ。男としての生き方を、理想を、教えてもらった気がする。
監督は、人気テレビドラマ「CSI」シリーズを手がけたデラン・サラフィアン、「ターミネーター3」の原案を書いたテディ・サラフィアンの2人の息子を持つリチャード・C・サラフィアン。「コワルスキ」役には、当時新人のバリー・ニューマン。盲目のDJ「スーパー・ソウル」役には、クリーヴォン・リトル。
"Tighten your seat belt. You never had a trip like this before."
海兵隊出身で、警官、プロ・レーサーなど数々の肩書きを持ってきた「コワルスキ」。現在は、自動車の陸送ドライバーとして働く。ある日、彼はデンバーからサンフランシスコへとダッジ社のスポーツ・カー、チャレンジャーの陸送を依頼される。道中、覚醒剤を得るために、バー「地獄の天使」に立ち寄った。そこで、彼はバーの店主と「サンフランシスコまで15時間で辿りつくか、どうか」の賭けをして…。
ダッジ社のチャレンジャーが200マイルでひたすら走り続けている。70年代に製作された作品だが、要所要所のカー・チェイスには迫力がある。アクションでもあり、ロード・ムービーでもあり、そしてドラマでもある。バリー・ニューマンの精悍な顔つきがかっこいい。
「コワルスキ」は走る。急ぐ。警察に手配されていても、様々な人に出会っても、自分の過去に囚われても。ドリフトが道路に刻むタイヤ痕。巻き上げる砂ぼこり。照りつける太陽に、砂漠に刻み付けるチャレンジャーの軌跡。シンプルな映画なのだが、なぜだか自分もどこまででも駆け抜けて行ける気がした。
理由なんてなくて良い。男は、何かを求めて突っ走っていくべきであり、華々しく、潔く散るべきだ。「コワルスキ」からは、男としての生き方、理想と浪漫を教わった気がする。女性には、この作品を観て「コワルスキ」の渋さ、潔さに惚れて欲しい。男性には、この作品を観て、落ち込んだ気分を奮い立たせて欲しい。それがひとつの悟り。「バニシング・ポイント」だ。
● DVD
バニシング・ポイント (Amazon.co.jp)