● チャプター27 / Chapter 27 [カナダ / アメリカ / 2007年]
ジョン・レノンはなぜ殺されたのか。チャップマンの生い立ちなどには触れず、件までの3日間が淡々とした語り口で描かれている。突起するような盛り上がりはないが、油断すると狂気に取り込まれてしまいそうな影響力がある。この作品は、なかなか怖い。
監督は、J・P・シェファー。「マーク・デヴィッド・チャップマン」役には、「ファイト・クラブ」「シン・レッド・ライン」のジャレッド・レトー。「ジュード」役には、「フォーチュン・クッキー」のリンジー・ローハン。「ポール」役には、ジュダ・フリードランダー。
"No one can survive becoming a legend."
1980年12月6日、ハワイ出身の「マーク・デヴィッド・チャップマン」は、ジョン・レノンが住まうニューヨークのダコタ・ハウスにいた。11月、ジョン・レノンのニュー・アルバム「ダブル・ファンタジー」が発売されたこともあって、彼に一目会おうとする人々で賑わっている。「チャップマン」の目的もまた、彼らと同じであった。以前にも「チャップマン」は、ジョン・レノンに会おうとニューヨークを訪れていたが、目的は果たせなかったのである。しかし、今回は何かが違う。きっとジョン・レノンに会える、という予感があった…。
1980年12月8日、ダコタ・ハウスの前で、かのジョン・レノンを殺害した「マーク・デヴィッド・チャップマン」。彼の生い立ちなどには触れることなく、12月6日にニューヨークに降り立ってから、12月8日に事に及ぶまでの3日間だけに焦点を当てた異色のドラマである。整った顔立ちで人気高いジャレッド・レトーは、「チャップマン」を演じるために体重を30キロも増量させたという。作品を観賞して、彼が演じる「チャップマン」と「チャップマン」本人と見比べる。これだけで、この作品に対するジャレッド・レトーの意気込みと努力の跡が窺えた。
「チャップマン」は狂気に満ちている。だが、彼なりの苦悩や葛藤があった。そういった"心の叫び"が、まとわりつくような語り口で囁きかけてくる。200時間に及ぶ「チャップマン」へのインタビューを行って執筆された『ジョン・レノンを殺した男』という原作があるにしても、それをニュートラルに映像化した点で新鋭J・P・シェファーは評価されて然るべき。理屈や理性を超えて叫びたくなる瞬間を経験したことがあれば、この作品を客観的に眺めているのは難しい。もちろん、「チャップマン」への同情の余地はないのだが。
"Chapter 27"というタイトルは、彼が強く影響を受けたとされる『ライ麦畑でつかまえて』が全26章で完結すること、そして、2007年がジョン・レノンの没後27年目を迎えることに由来する。そこには、精神を揺さぶられるような影響力の怖さがあった。
● 製作 : Peace Arch Entertainment Group
● 配給 : Asmik Ace Entertainment
● 公開 : 2007年 (アメリカ)