● エリン・ブロコビッチ / Erin Brockovich [アメリカ / 2000年]
実話に基づいた、「エリン・ブロコビッチ」という女性のサクセス・バイオグラフィー。テーマに社会派を掲げながらも、底抜けた明るさが印象的である。スカッとしたが、嫉妬もした。事を疑うこと、事を正そうとすること。バイタリティーのある人間はどうしてこうも輝いて見えるのか。
監督は、"オーシャンズ"シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ。「エリン・ブロコビッチ」役には、「プリティ・ウーマン」「ノッティングヒルの恋人」のジュリア・ロバーツ。「エド・マスリー」役には、「オリエント急行殺人事件」「ドレッサー」のアルバート・フィニー。「ジョージ」役には、「サンキュー・スモーキング」「幸せのレシピ」のアーロン・エッカート。
"She brought a small town to its feet and a huge corporation to its knees."
預金残高は100ドルを切ってしまった。3人の子供が帰りを待っている。「エリン・ブロコビッチ」は、求職活動に必死だった。ミス・ウィチタという過去の栄光が彼女のプライドを高く押し上げていたが、なりふりかまっていられない。それでも、勝ち気で明け透けな性格が裏目に出てしまっていた。今日もまた、採用面接で不採用を言い渡された彼女にさらなる不幸が襲って…。
監督スティーヴン・ソダーバーグが、事実にこだわった意欲作。「エリン・ブロコビッチ」という女性がひょんなことから舞い込んだ弁護士事務所での奮闘劇であり、エリン・ブロコビッチ本人もウェイトレス役で出演している。一見すると、映画ならではの良くできたサクセス・ストーリーだが、脚本にはほとんど脚色がほどこされていない、というから驚きである。退くを知らず、何事もグイグイと押し切ってしまうパワフルな女性を演じきったジュリア・ロバーツは、この作品でアカデミー主演女優賞を勝ち取った。
この物語が事実であるというなら尚更、「エリン・ブロコビッチ」の横暴で粗野な振る舞いが気になるところだが、なかなか憎めない。もちろん、彼女はヒーローなのだが、そこに社会の不条理や理不尽を納得しない頑固さはあっても、偽善はない。恩着せのない、それこそ裏表のない彼女の性格が、多くの人々に受け入れられていく様は爽快であった。
PG&Eを相手に集団訴訟を起こしていく、という堂々たる社会派テーマを掲げながらも、「エリン・ブロコビッチ」と「マスリー」の遣り取りに見られるような底抜けた明るさが作品の特徴でもあるが、おそらく作品では描かれていない多くの障壁があったに違いない。「
インサイダー」ほどの四面楚歌で絶望的な危機感は求めないにしても、万事がうまく行き過ぎているように見受けられる点に勿体なさを感じている。
男女を問わず、バイタリティーを持った人間は何と輝いて見えることか。同じ土俵には立てずとも、「エリン・ブロコビッチ」に学んだ点は多い。
● 製作 : Jersey Films
● 配給 : Sony Pictures Entertainment
● 公開 : 2000年 (アメリカ)