● ジャンパー / JUMPER [アメリカ / 2008年]
爽快でパワフル。目に見えるものが楽しい。ダグ・リーマンの経験が大いに活かされた。VFXという助力を得て、壮大なケンカ映画を完成度の高い娯楽作品として仕上げた。ヘイデン・クリステンセンの勢いは相変わらずだが、ジェイミー・ベルという存在にも一目置きたい。
監督は、「ボーン・アイデンティティー」「Mr. & Mrs. スミス」のダグ・リーマン。原作は、スティーヴン・グールドの『ジャンパー 跳ぶ少年』。「デヴィッド・ライス」役には、「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」のヘイデン・クリステンセン。「ミリー・ハリス」役には、海外ドラマ"The OC"シリーズのレイチェル・ビルソン。「グリフィン・オコナー」役には、「キング・コング」「父親たちの星条旗」のジェイミー・ベル。「ローランド・コックス」役には、「パルプ・フィクション」「ダイ・ハード3」のサムエル・L・ジャクソン。
"anywhere is possible."
ミシガンで生まれ育った高校生「デヴィッド」は、想いを寄せる「ミリー」にスノーグローブを贈った。しかし、同級生の難敵「マーク」はそれを強引に奪い、凍て付く河へと放り投げた。「ミリー」の制止もきかず、「デヴィッド」は凍った水面に脚をおろす。スノーグローブは取り戻せたが、足元が割れ、「デヴィッド」は川底へと沈む。生命の危機に直面し、彼は自身の才能を知る。気が付くと、馴染みのある図書館の中であった。"JUMP"に目覚めた。ハッピーエンドのはずだった…。
VFXの技術進歩に懐古的な憂いを感じる反面、目に見える楽しさが増えたとも思う。シームレスに世界を飛び回る「デヴィッド」の姿は非常に爽快かつパワフルであり、マイケル・ベイの「
トランスフォーマー」にも同様の心象を抱いたが、シーンの迫力には圧倒されるばかりであった。
ダグ・リーマンの監督キャリアは、「
ボーン・アイデンティティー」「Mr. & Mrs. スミス」に次いで本作が3作目であるが、ここ6年間の間、アクション作品のビッグ・タイトル製作に携わってきただけあって、その経験が大いに活かされている。もっとも象徴的であるのが、"ジャンパー"と"パラディン"、追う者と追われる者の逼迫した対決の模様である。有利不利の微妙なシーソーゲームの様相を呈しながらも、終盤に向かうにつれ、バトルを激化させていく。VFXという助力も得て、壮大で、悪く言えば傍迷惑なケンカ映画を完成度の高い娯楽作品として仕上げた。
"スター・ウォーズ"シリーズで、世に名を知らしめたヘイデン・クリステンセンは、またしても一筋縄ではいかない若くて勢いのある役柄に挑んだわけだが、十二分に存在感を示した。彼にも増して、冷静かつ孤高の"ジャンパー"である「グリフィン」を演じたジェイミー・ベルの演技力にも味がある。魅力ある配役を見事にこなし続けており、彼の動向にも期待したい。
"ジャンパー"と"パラディン"という好奇心をかき立てられる世界観があるにも関わらず、それは添え物にすぎなかったのか、饒舌に語られない点がむしろ残念であったが、娯楽作品だと割り切ってしまえばいい。映像に裏切られることはない。是非、劇場での観賞をお勧めしたい。
● 製作 : Twentieth Century-Fox Film Corporation
● 配給 : 20th Century Fox
● 公開 : 2008年2月6日 - イタリア(ローマ/プレミア)