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    アメリカン・ギャングスター / American Gangster
    ● アメリカン・ギャングスター / American Gangster [アメリカ / 2008年 / R-15]

    アメリカン・ギャングスター / American Gangster_b0055200_451458.jpg過去の"ギャング映画"には類を見ない個性を持っており、リドリー・スコットの新たな側面を見せてくれる作品であった。デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウの対立が色鮮やかであるだけでなく、キーパーソンを演じるジョシュ・ブローリンが非常に味のある存在感を示す。



    監督は、「エイリアン」「ブレードランナー」のリドリー・スコット。「フランク・ルーカス」役には、「マルコムX」「デジャヴ」のデンゼル・ワシントン。「リッチー・ロバーツ」役には、「L.A.コンフィデンシャル」「グラディエーター」のラッセル・クロウ。「ニッキー・バーンズ」役には、「星の王子ニューヨークへ行く」のキューバ・グッディング・Jr。「トルーポ」役には、「ノーカントリー」のジョシュ・ブローリン。「ヒューイ・ルーカス」役には、「ラブ・アクチュアリー」のキウェテル・イジョフォー。

    "There are two sides to the American dream. "
    1968年のニューヨーク。「フランク」は黒人ギャングのボスとして知られる「バンピー」の運転手を務めていた。「バンピー」の没後、「フランク」はこれまでの学習と新たな発想で麻薬ビジネスを展開する。「フランク」の名が知られることはなかった。ただ静かに、暗黒街での勢力を拡大させていく。警察組織の内部で汚職が跋扈していたこの時代に、ニュージャージーの「リッチー」だけは潔癖を貫いていた。融通がきかぬ性格であるから、同僚、妻子と人間関係にも不器用であったが、信頼に値するという評価を受け、麻薬捜査班のチーフに任命される。検察は相場よりも価格が安く、純度が高い"ブルーマジック"というヘロインの出現に頭を抱えていた。「リッチー」の役目は、市場を牛耳る、姿のみえないボスに辿り着くことであった…。


      1960年代後半から1970年代前半にかけて、ハーレムでヘロインを密売し、犯罪組織のボスであった「フランク・ルーカス」とは実在の人物であり、本作は彼を取り巻いた事実を基に製作された作品である。2007年度のアカデミー賞では、「ママ・ルーカス」を演じたルビー・ディーが助演女優賞にノミネートされた。

      どちらかといえば、「マイ・ボディガード」や「デジャヴ」でワシントンとタッグを組んだ経緯もあるトニー・スコットに向いた作品であるようにも思えるが、結果として実兄であるリドリー・スコットは、非常に上品に、スマートに"ギャング映画"として本作を仕上げた。上品に、スマートに、という意味では、過去の様々な"ギャング映画"にも類を見ないような個性がある。作品がどういった評価を受けるか、は別として、リドリー・スコットの新たな一面を垣間見たような気がする。

      基本的には「フランク・ルーカス」が主体的に描かれている。「バンピー」亡き後、頼れる存在もなく、ほぼ裸一貫の状態から、きわめて知的に暗黒街の実権を握っていく過程が圧巻であった。「リッチー・ロバーツ」を演じたラッセル・クロウの存在感も大きい。両者の対立が本作のひとつの見所でもあるのだが、一族団欒で豪勢な食事を摂る「フランク」とジャンクフードをむさぼる「リッチー」など、画で見る立場の違いも鮮やかであった。汚職が横行する警察組織の中で、潔癖を貫く「リッチー」であるが、それは単純に"正義感"があるゆえ、ではなく、"融通がきかない"から、であるのが、数少ないシーンからも汲めたのも面白い。

      「リッチー」と対をなす「トルーポ」を演じたジョシュ・ブローリンの悪徳警官振りが非常に良かった。しかしながら、「フランク」と「リッチー」という表面的な対立に加えて、「フランク」と「トルーポ」、「リッチー」と「トルーポ」という構図にも重要な意味がある以上、パンチ力不足である点が否めない。彼のエピソードの使い方、描き方次第ではもっとわかりやすい作品になったのではないか、と歯がゆいほどの勿体なさも感じた。

      ともあれ、重厚で、単純にカッコイイ作品である。"ギャング映画"としてはあまりに綺麗すぎたが、実話を基にしているという点では、人間を飄々と描くリドリー・スコットの作風が活きたのかもしれぬ。彼が目の前にいれば、この作品に対する印象を聞いてみたい。満足感に溢れているのだろうか、もしかすれば懲りてしまっただろうか。どちらにせよ、今後の彼の作品に、本作がどういった影響を与えていくかが大いに楽しみである。

    ● 製作 : Universal Pictures
    ● 配給 : 東宝東和
    ● 公開 : 2007年10月19日 - アメリカ(ニューヨーク/プレミア)
    by movis | 2008-03-10 04:11 | 犯罪 / ギャング