Top
MOVIS
one for all, all for one
Will Be Next to ...
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 1st season
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 2nd season
  • アマルフィ 女神の報酬
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 1st season
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 2nd season
  • インセプション
  • 最近のエントリ
    検索
    カテゴリ
    タグ
    タイトル別カテゴリ
    ■ 音順カテゴリ


    ■ 特集
    映画で音楽を聴く

    ■ 公開年度別カテゴリ

    sorry...
    restorin' soon ...
    最新のトラックバック
    ワンピースのこのセリフに..
    from 脳挫傷による見えない障害と闘..
    252生存者あり(テレビ..
    from 単館系
    Blu-ray バックド..
    from VAIOちゃんのよもやまブログ
    FRINGE シーズン1
    from piece of life ..
    コラテラル(55点)評価:△
    from 映画批評OX
    『ある日どこかで』観てほしい
    from 映画のブログ
    ps3TERMINATO..
    from 家電逸品
    アルマゲドン
    from Addict allcine..
    ターミネーター2
    from 映検つながるブログ
    バンテージ・ポイント
    from 映画、言いたい放題!
    救命病棟24時
    from 救命病棟24時
    ハッピーフライト
    from ピースのAMEBLO CA..
    ハッピーフライト
    from 映画、言いたい放題!
    バッファロー'66
    from Addict allcine..
    『ジャンパー』を観たぞ〜!
    from おきらく楽天 映画生活
    ジャンパー(感想120作..
    from 別館ヒガシ日記
    スパイダーウィックの謎
    from 映画、言いたい放題!
    真夏のオリオン
    from Diarydiary!
    真夏のオリオン
    from 橋本甜歌 前略 画像
    グラン・トリノ
    from Diarydiary!
    最新のコメント
    > ムーさん なか..
    by movis at 03:46
    私も、そのブログの読みま..
    by mnstr_movie at 20:47
    > ムーさん ども..
    by movis at 14:32
    どうもどうも!山形の遊び..
    by mnstr_movie at 12:57
    > 台湾人さま は..
    by movis at 00:09
    リチャード・チェンバレン..
    by 台湾人 at 00:16
    > 鍵コメントさま ..
    by movis at 03:42
    > samurai-ky..
    by movis at 01:23
    「眼下の敵」を筆頭に"潜..
    by samurai-kyousuke at 09:34
    > Jimさん は..
    by movis at 12:19
    一年ほど前に飛行機の中で..
    by Jim at 22:51
    > ならぢゅん さん ..
    by movis at 06:39
    Youth-Kさま、トラ..
    by ならぢゅん at 12:06
    > samurai-ky..
    by movis at 02:02
    基本的には娯楽作品が好き..
    by samurai-kyousuke at 23:08
    > samurai-ky..
    by movis at 15:52
    ロイ・バッデイ(ルトガー..
    by samurai-kyousuke at 01:03
    > samurai-ky..
    by movis at 23:33
    さすがにフランク・ダラボ..
    by samurai-kyousuke at 20:30
    > samurai-ky..
    by movis at 00:14
    フォロー中のブログ
    その他のジャンル
    ファン
    記事ランキング
    ブログジャンル
    画像一覧
    リンク
    タグ:□ 社会派 ( 9 ) タグの人気記事
    誰も守ってくれない / Nobody to watch over me
    ● 誰も守ってくれない / Nobody to watch over me [日本 / 2008年]

    b0055200_2161899.jpg演技派俳優が名を連ね、非常に精巧なドラマであった。容疑者家族の存在に焦点を当て、メディアや社会システムの現実に一石を投じ、社会派作品としては重要な存在意義がある作品だと思う。しかし、本作のメッセージが万人に届くかどうかを考えると…。



    監督は、"踊る大捜査線"シリーズの君塚良一。「勝浦卓美」役には、佐藤浩市。「船村沙織」役には、志田未来。「三島省吾」役には、松田龍平。「本庄圭介」役には、柳葉敏郎。「本庄久美子」役には、石田ゆり子。「梅本孝治」役には、佐々木蔵之介。「佐山惇」役には、東貴博。「尾上令子」役には、木村佳乃。「坂本一郎」役には、佐野史郎。「稲垣浩一」役には、津田寛治。「園部達郎」役には、冨浦智嗣。

    "殺人犯の妹となった少女と彼女を守る刑事の逃避行が始まる──"
    晴れた中学校の校庭では体育の授業が行われ、生徒たちの眩しい笑顔が零れている。その輪の中に「船村沙織」の姿があった。しかし、その頃、彼女の自宅に警察官が押し入った。「沙織」の未成年の兄が、小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されたのだ。東豊島署の刑事「勝浦卓美」と「三島省吾」は、同署暴力犯係係長の「坂本一郎」に呼び戻される。命ぜられた任務は、容疑者家族の保護であった。彼らを何から守るのか。「勝浦」と「三島」は、船村家を取り囲む野次馬やマスコミを目の当たりにして、自ら答えを見出した。決して、公にされることのなかった任務。1月24日の長い夜は、彼らの苦悩の幕開けにすぎなかった…。


      "踊る大捜査線"シリーズで有名な監督の君塚良一と製作の亀山千広が贈る、殺人容疑者家族の少女と彼女の保護を担当する刑事の逃避行を描いたシリアス・ドラマ。君塚はプレスリリースの中で、"踊る大捜査線"シリーズ製作時に重ねた取材の中に本作のモチーフがあると語っている。ここで興味深いのは、善と悪が明確な"踊る大捜査線"シリーズとは異なって、本作は只ひたすらに深慮を煽ってくる憂鬱な物語である点だ。彼は、当初はこれほど鋭く社会を描くつもりはなかった、と語りながらも、今後エンターテイメントとしての警察ドラマを描くためには、社会の現実と向き合う必要があった、と意気込んでいる。君塚にしては珍しい、シリアスの真ん中を行く作品であるから、本作が今後の彼の活動にどのような影響を与えていくのかが楽しみだ。

      "踊る大捜査線"シリーズ製作時の取材の中から拾い上げたモチーフ。それは、警察が容疑者の家族を保護する仕事がある、というエピソードであった。物語は刑事である「勝浦」と殺人容疑者家族である「沙織」がドラマを織り成すまでは、ハンディ・カメラでの撮影が功を奏してか、ドキュメンタリーのごとく淡々と映像が過ぎ去っていく。例えば、マスコミの現地レポーターの奥に見えている殺人容疑者の自宅の中で、残された家族を相手に、警察やその他関係者が粛々と"仕事"を進めていくシーンなどは圧巻であった。原田眞人の「クライマーズ・ハイ」が良い例だが、こうした日本人の役人根性や無関心さがもっと邦画で描かれてほしい。人間のクールな気質や無表情は洋画ではなかなか観ることはできないし、ある種、日本人に独特であると思うからだ。本作の「勝浦」と、かろうじて「三島」に、彼らの周囲よりも強く人間味を感じるように、感情の寒暖を描く土台の上に乗ったドラマは浸透力が違う。私はこの手の作品には弱い。
     
      社会の現実を描くため、容疑者家族に焦点を当てるという独創的なアプローチを採る中にあって、警察が彼らを保護する理由に、彼らの自殺を防ぐ目的があることが語られる。犯罪容疑者の家族はあらゆるレッテルを張られ、社会からの冷ややかな、時には好奇の視線が身を突き刺す。保護を担当する刑事もまた罵倒や批判の対象となる。犯罪容疑者を取り巻く人々の生き難さは映像を通して、ありありと伝わってきた。さらに、容疑者家族においても、思春期の真っ只中を生き、感受性が鋭い13歳の女の子「沙織」を核に描いたことで、彼らが置かれている立場の苦々しさ、痛々しさが一層惹き立てられている。

      さて、君塚はプレスリリースにおいて"解釈は観た人に委ねる"との意図を強調しているが、本作のテーマも然ることながら、ドラマの主張の向かう先が極めて限定的であることが気に掛かる。それは、例えば「船村家」と同じ境遇に置かれた人たちが希望を見出そうとして観賞するかもしれないし、普段はメディアで語られることの少ない容疑者家族というテーマに興味を持った人たちが、好奇心や社会勉強を兼ねて観賞するかもしれないが、同様の事件で被害者という立場に立たされた人たちは本作をどう捉えるか、である。その点を配慮してか、本作には「本庄圭介」と「本庄久美子」という登場人物に被害者家族の心境を代弁させている。しかし、彼らはあまりに人が出来すぎていた。仮に私が大切にしている人間の命が他者によって奪われた、とするならば、おそらく「沙織」、そして「本庄」夫婦の言動にすら憤りや嫉妬といったあらゆる負の感情が沸き上がってきてしまいそうだ。例え、彼らは双方が"被害者"だという理論に一理あると思っていても、である。
      
      実社会においては、毎日のように殺人や暴行、死や傷といった漢字が様々なメディアを巡る。私は、そうした報道を受けて、被害者の傷ましさが心痛となることはあっても、容疑者や被告人が残した家族に対して何か特別な想いを抱くことはない。したがって、容疑者家族の存在を明らかにし、メディアや社会システムの現実に一石を投じたという意味では、社会派作品として重要な存在意義があるように思う。自分が容疑者家族の立場だったら、被害者家族の立場だったら、という深慮のトリガーとなって、観る人の感情を揺さぶることもまた、作品の意義として重要である。しかしながら、やはり被害者家族の立場を思うと、どうしても本作の観賞を万人に勧められないのである。

    ● 関連作品 ※レビュー対象外
    誰も守れない [TV/2009年]
     → タイアップ作品、TVムービーとして放送

    ● 製作代表 : FILM
    ● 日本配給 : 東宝
    ● 世界公開 : 2009年01月24日 - 日本
    ● 日本公開 : 2009年01月24日
    [PR]
    by movis | 2009-02-03 21:12 | ドラマ
    ワールド・オブ・ライズ / Body of Lies
    ● ワールド・オブ・ライズ / Body of Lies [アメリカ / 2008年 / PG-12]

    b0055200_2249048.jpg本作の公開は2008年の年末。この一年の締めくくりに至上の作品を観た。デリケートな情報戦の綱渡りのような緊迫感と、過激な戦闘シーンの臨場感。加えて、登場人物の人生が見えるような語り方をする作品だ。リドリー・スコットの業に畏怖さえ…。



    監督は、「グラディエーター」「アメリカン・ギャングスター」のリドリー・スコット。「ロジャー・フェリス」役には、「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」のレオナルド・ディカプリオ。「エド・ホフマン」役には、「アメリカン・ギャングスター」のラッセル・クロウ。「ハニ・サラーム」役には、「スターダスト」のマーク・ストロング。「アイシャ」役には、ゴルシフテ・ファラハニ。「バッサーム」役には、「マリア」のオスカー・アイザック。「ガーランド」役には、「エイゼンシュテイン」のサイモン・マクバーニー。「アル・サリーム」役には、アロン・アブトゥブール。「オマール・サディキ」役には、「キングダム/見えざる敵」のアリ・スリマン。

    "Trust no one. Deceive everyone."
    ヨルダンを拠点にして、欧米で無差別テロを繰り返す組織の首謀者「アル・サリーム」を捕らえるため、「ロジャー・フェリス」はイラクにいた。CIAエージェントの彼は、中東で常に死の危険を伴いながら、必死の工作活動を繰り返していく。CIAのベテラン・エージェント「エド・ホフマン」は、ラングレーのCIA本部にてスパイ衛星から送信される「フェリス」の行動を監視している。「フェリス」にとって、上司である「ホフマン」の指示は絶対であったが、危険な現場にいる「フェリス」と、安全が確保された場所にいる「ホフマン」の間には温度差が生じ、対立を深めていく。やがて「フェリス」は組織に関する重要な資料の所在を掴み、敵陣への進入を試みる。極秘資料こそ入手できたが、「フェリス」は友人としても慕っていたパートナーを失い、自らも重傷を負う。しかし、「ホフマン」はまるで何事もなかったかのように、次の任務を「フェリス」に言い渡すのであった…。


      原作は、ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、デヴィッド・イグネイシャスの同名小説。「アメリカン・ギャングスター」ではギャング作品に挑み、新たな一面を見せたリドリー・スコットが、「ブラックホーク・ダウン」を彷彿とさせるようなリアリティのある中東の戦場を舞台に、緊迫感のあるスパイ・サスペンスとして大成させた。2008年、公開は年末に差し迫った時期であったが、この年に上映された作品の中では最も骨太でシリアスな佳作であった。

      何よりもまず、映像に臨場感が溢れている。イラクやヨルダンといった中東の国々を舞台に繰り広げられる銃撃戦やカーチェイスは極めてダイナミックであるし、アラビックな情緒を殺さず、真に迫るかのような緊迫感や息苦しさがスクリーンを駆け巡る。もともと、リドリー・スコットは火薬を用いるような大規模の戦闘描写に定評があるが、本作だけでも合点がいく。銃火器による戦闘シーンに加え、本作が描く"情報"を巡る攻防は、知的で物静かだが手に汗握るような白熱の展開を見ることができる。

      作品の醍醐味は、こうした策略戦の中に見えてくる"信用"や"裏切り"に、言葉にしがたい哀愁が漂っている点だ。"信用"を建前に、目的の為になら"裏切り"を厭わない「フェリス」と「ホフマン」、"信用"を絶対に、"情"で周囲をコントロールする「ハニ」。CIAとGID(ヨルダン情報局)の対極とも言えるプライドが「アル・サリーム」を巡ってぶつかり合う。両者の信念は相乗効果を生むわけもなく、ジリジリともどかしい進退を繰り返し、世界を救うのは"信用"か"裏切り"か。アンバランスな「フェリス」対「ホフマン」対「ハニ」の三つ巴、対「アル・サリーム」の四つ巴の攻防は息付く暇もなく、128分間という時間を疾走していく。男臭いシーソーゲームの中に描かれる安心感は、「フェリス」も「ホフマン」も愛を注ぐ人間がいる点だ。相手も愛し方も違うが、彼らは愛を以って愁吟の信念を貫いていく。
     
      かつてはアイドルのような輝かしい扱いを受けたレオナルド・ディカプリオは、いまや熟達した演技を披露してくれる非凡な表現者だ。哀歓鋭い「フェリス」の存在があって、子供の世話をしながら冷酷な指令を口にする「ホフマン」の不気味さや、有余涅槃を感じさせる「ハニ」の豪気さが、憎いまでに映えてくる。テロとの闘いをテーマに選ぶ作品は数多いが、ハラハラとするようなデリケートな情報戦の描き方が妙。そして作品に迫力を与えておきながら、登場人物の人生そのものを描いてしまうリドリー・スコットという人間の業がこわい。本作が持つ圧倒感に、観賞後もしばらくは高揚感が消えなかった。
      
    ● 製作代表 : De Line Pictures
    ● 日本配給 : Warner Bros.
    ● 世界公開 : 2008年10月05日 - アメリカ(ニューヨーク/プレミア)
    ● 日本公開 : 2008年12月20日
    [PR]
    by movis | 2009-01-05 23:03 | サスペンス / ミステリー
    セルピコ / Serpico
    ● セルピコ / Serpico [アメリカ / 1973年]

    b0055200_2304221.jpg1960年代後半、ニューヨーク市警に跋扈していた汚職に真っ向から立ち向かったフランク・セルピコの実話に基づいた社会派作品。作品の構図や構成が緻密に演出されているため、単調な作品であるながらも飽きはこない。アル・パチーノの迫真の演技にも注目。



    監督は、「狼たちの午後」のシドニー・メルット。「フランク・セルピコ」役には、"ゴッドファーザー"シリーズのアル・パチーノ。「シドニー・グリーン」役には、「キングコング」のジョン・ランドルフ。「トム・キーオ」役には、「スティング」のジャック・キーホー。「マクレイン」役には、「華麗なる賭け」のビフ・マクガイア。「ボブ・ブレア」役には、「サブウェイ・パニック」のトニー・ロバーツ。「レズリー・レーン」役には、「追憶」のコーネリア・シャープ。

    "Many of his fellow officers considered him the most dangerous man alive
     - An honest cop."
    1971年2月3日、ブルックリンのグリーンポイント病院。そこへ顔面に銃創を負ったニューヨーク市警「フランク・セルピコ」が担ぎ込まれた。地区総監「シドニー・グリーン」の命により、彼の病室には24時間の警戒態勢が敷かれた。1959年、「フランク・セルピコ」は人を圧倒するような正義感を燃えたぎらせて警察学校を卒業し、ニューヨーク市警の一員に加わる。しかし、彼は次第に自身が抱えていた警察官としての理想像と、現実との大きなギャップに困惑を隠せないようになる。それは当然のように横行している同僚たちの収賄や怠慢であって…。


      ニューヨーク市警に蔓延った汚職に対して真っ向から立ち向かったフランク・セルピコその人の実話に基づいた作品。「フランク・セルピコ」役を演じるは、前年の1972年に「ゴッドファーザー」にて名を広めたばかりのアル・パチーノ。彼は本作で演じるにあたり、フランク・セルピコと長期に渡って寝食を共にした、というエピソードも有名である。

      第三者的に事を眺めれば絶対正義であっても、社会や組織を相手に主義主張しようとしたために孤立無援に陥ってしまうというジレンマが手にとるように体感できる。硬派な社会派作品に描かれやすい相関であるが、本作はそうした一種の"社会的な生きにくさ"の表現を抑えながらも、「フランク・セルピコ」その人の在り方をドラマとして見せることに成功している。例えば、節々で描かれる「セルピコ」の恋模様などをとってみても、牽強付会な表現は見当たらず、ただただ彼の公私に渡る苦悩が理解できる、といった具合だ。

      いきなり顔面に銃創を負った「セルピコ」が病院に担ぎ込まれる、というショッキングなシーンを冒頭から見せ付けられるわけだが、物語の核心を予め予告しておく、という作品の構図も効果的である。そうと言うのも、作品は忠実に「セルピコ」の軌跡を追っていく反面、至極単調であるからだ。観始めてしまった以上は、なぜ「セルピコ」が重傷を負わなければならないのか、という疑問が解決するまでは観賞を続けるほかない。興味をインパクトのあるシーンに向けておきながら、ニューヨーク市警の目も当てられぬ汚れきった組織内部を見せ、そしていよいよ核心へと迫っていく。まんまと作品の意図に嵌っているような気がして悔しくもあるのだが、作品の構成はそれほど緻密に計算されている感がある。

      アル・パチーノの演技も作品の大きな見所だ。フランク・セルピコ本人の写真を見てもらえれば一目瞭然だが、60年代後半から世界中に流行した"ヒッピー・スタイル"で任務にあたる「セルピコ」の風貌はなかなかの再現性を誇っていて、冒頭で紹介したエピソードも説得力がある。若かりし頃のアル・パチーノは、ギロッとした目元が印象的であるが、本作においては、その"眼の演技"に心的葛藤や苦悩が見事なまでに表現されていたように思う。

      「セルピコ」が一貫して潔癖を貫く理由や私服警官としての勤務にこだわる理由などが分かりづらく、やはり作品は単調であるため、漫然と観賞してしまうと淡白な印象を受けてしまうかもしれない。ともあれ、60年代後半のニューヨーク市警の汚職を描いた作品の中では、その題材を主軸に描いた作品として貴重だ。総じて物語には絶望感が漂っているが、人生観に影響を与えてくれそうな一作と言えようか。

    ● 製作代表 : Artists Entertainment Complex
    ● 日本配給 : Paramount Pictures / Cinema International Corp.
    ● 世界公開 : 1973年12月05日 - アメリカ
    ● 日本公開 : 1974年07月13日
    [PR]
    by movis | 2008-12-07 02:34 | 犯罪 / ギャング
    トラフィック / Traffic
    ● トラフィック / Traffic [アメリカ / 2000年]

    b0055200_265633.jpgアメリカ、メキシコの巨大な麻薬カルテルをみつめる、色の異なる3つのストーリー。麻薬が生み出す圧倒的な絶望感。綺麗事だけではどうにもならないこともある、と言われた気がするが、その答えを明示してもらえない。希望を探すこと。社会派として貴重な一作だった。



    監督は、「エリン・ブロコビッチ」のスティーヴン・ソダーバーグ。「ロバート・ウェークフィールド」役には、「ウォール街」のマイケル・ダグラス。「ヘレーナ・アヤラ」役には、「シカゴ」のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。「ハビエル・ロドリゲス」役には、「バスキア」のベニシオ・デル・トロ。「モンテル・ゴードン」役には、「ホテル・ルワンダ」のドン・チードル。「レイ・カストロ」役には、ルイス・ガスマン。「マノーロ・サンチェス」役には、ジェイコブ・バルガス。「カルロス・アヤラ」役には、スティーヴン・バウアー。「キャロライン・ウェークフィールド」役には、エリカ・クリステンセン。「アーニー・メッツガー」役には、「バンテージ・ポイント」のデニス・クエイド。

    "No One Gets Away Clean"
    メキシコ、ティファナ。国境警備を担当するメキシコ州警察「ハビエル」と「マノーロ」は、情報屋の垂れ込みをもとに麻薬の密輸を暴くものの、連邦警察「サラサール」将軍に容疑者の身柄を奪われてしまう。「ハビエル」の腕を認めた「サラサール」は彼を呼び出し、ティファナに根付く巨大な麻薬密輸ルートを壊滅させるために、ある任務を課すのであった。アメリカ、オハイオ。麻薬取締最高責任者に任命されたオハイオ州の最高裁判所判事「ロバート」は、新たに与えられた職務に昂揚した。しかし、彼が立ち向かうべき麻薬は、皮肉にも娘の「キャロライン」に魔の手を伸ばしていたのでった。アメリカ、サンディエゴ。子を宿し、幸せな生活を送っていた「ヘレーナ」であったが、突然、実業家の夫「カルロス」が麻薬取締局(DEA)捜査官「モンテル」と「レイ」に逮捕されてしまう。呆然とする「ヘレーナ」に、顧問弁護士「アーニー」は驚くべき事実を告げて…。


      社会派やドキュメンタリーにも通じるスティーブン・ソダーバーグは、本作で2000年アカデミー賞監督賞を受賞した。アメリカ・メキシコをまたがって蔓延る巨大な麻薬カルテルに焦点を当てた犯罪ドラマ。同年、ソダーバーグは「エリン・ブロコビッチ」を製作しているが、雰囲気が異なる両作品は、社会の諸問題を鋭くえぐっている点で共通している。

      アメリカ、メキシコに蔓延る"麻薬"という闇をテーマを直視している。フィクションであるとはいえ、麻薬の脅威や恐怖が映像を生々しく這い回り、絶望を誘う。非常に濃厚な麻薬戦争を舞台としながらも、抑揚は小さく、物語は情をはさむ余地もないほどに淡々と進んでいく。むしろ、この性格があるからこそ、テーマが現実的、日常的に体感できる。雲の上の話とも他人事とも思えず、世界観に惹きこませる演出が巧い。観る者を"その気"にさせる本作の引力は、ひとつのテーマを異なる環境、異なる人間がみつめる群像劇から生まれているように思える。

      物語を牽引していく「ロバート」、「ハビエル」、「モンテル」らだけでなく、彼らの家族、恋人、同僚の存在感も鮮やかであった。それぞれの生活が、赤、青、黄色と映像の色相が描き分けられている点も本作の特徴で、それぞれが異色の憂鬱と決意を秘めている。この三原色が混ざり合ってきたころには、ようやく明示的な解決策がないこと、愛や勇気だけではどうにもならないことを実感しはじめる。次第に、正義と悪の境界が滲み始め、正気を失いそうな不安に陥ってしまう。冒頭で述べた本作の絶望とは、まさにここに潜んでいる。

      ドキュメンタリーを観たかのようで、脱力感を得て、そして淡白だったという思いも禁じえないのであるが、一見の価値を強く主張しておきたい。ソダーバーグはエピローグのその後を観賞者の解釈に委ねているが、かろうじて「ハビエル」に希望を託しているようにも思える。彼の曇りのない眼差しの先には、おそらく後悔はない。信念という言葉に力強さ、頼もしさが帯びるような作品であった。

    ● 製作代表 : Bedford Falls Productions
    ● 日本配給 : 日本ヘラルド映画
    ● 世界公開 : 2000年12月27日 - アメリカ
    ● 日本公開 : 2001年04月28日
    [PR]
    by movis | 2008-09-08 02:18 | ドラマ
    クライマーズ・ハイ / CLIMBER'S HIGH
    ● クライマーズ・ハイ / CLIMBER'S HIGH [日本 / 2008年]

    b0055200_12515094.jpg極限までの興奮に陥り、恐怖心が麻痺してしまう"クライマーズ・ハイ"という状態の一片を、スクリーンを通して体感できるような緊迫感のある作品だった。観賞後に残る、淡白だったという心象が残念ではあるが、世界に強く引き込む出演者の演技を堪能されたい。



    監督は、原田眞人。原作は、横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』。「悠木和雄」役には、堤真一。「佐山達哉」役には、堺雅人。「玉置千鶴子」役には、尾野真千子。「安西耿一郎」役には、高嶋政宏。「白河頼三」役には、山崎努。「粕谷隆明」役には、中村育二。「追村穣」役には、螢雪次朗。「等々力庸平」役には、遠藤憲一。「岸円治」役には、田口トモロヲ。「田沢善吉」役には、堀部圭亮。「吉井弁次郎」役には、マギー。「神沢周作」役には、滝藤賢一。「亀嶋正雄」役には、でんでん。「伊東康男」役には、皆川猿時。「安西小百合」役には、西田尚美。「安西燐太郎」役には、小澤征悦。「黒田美波」役には、野波麻帆。

    "命を追った、あの夏"
    1985年8月12日、うだるような暑い夏の日。3日後に終戦記念日を控えたこの日、群馬県の地方有力紙"北関東新聞"の編集局では、中曽根首相の靖国公式参拝の動向を巡って緊張感が満ちている。そんなフロアを横目に、一匹狼の遊軍記者「悠木」は、販売局の親友「安西」から誘われた翌朝の谷川岳・衝立岩登頂に向け、着々と準備を進めていたのであった。重々しくザックを担ぎ、デスクを後にしようとした「悠木」のもとに、県警キャップ「佐山」が駆け寄って、耳打ちをした。ジャンボが消えた。「悠木」は脚を止める。事態を把握できず、しかし、とりあえず編集局を後にしようとした「悠木」であったが、まさにその時、共同通信社の速報がフロアに響き渡った。それは、東京羽田発大阪伊丹行き、日本航空123便が消息を絶った、という不穏な内容であった…。


      日本航空123便墜落事故は、小説やドラマなどのメディアで幾度と取り上げられてきた。『半落ち』の著者、横山秀夫による本作品の原作『クライマーズ・ハイ』もそのひとつである。彼は上毛新聞社で記者を務め、件の事故を取材している。この時の経験を、舞台を架空の新聞社"北関東新聞"にかえて描いた作品だ。同原作はNHKでテレビ映画として映像化されたが、劇場公開されたメジャー作品として、本作が日本航空123便墜落事故をテーマとした初の作品である。

      本作は、"大久保・連赤"事件以来の大きな出来事を扱うことになった地方新聞社が舞台だ。日航機事故に関わる全権デスクを担当することになった「悠木」を中心に、管理職との確執、記者の奮闘と苦悩、そして地方新聞社としてのプライドが描かれている。物語は独特のスピード感と緊張感を湛えて展開していく。145分という長尺作品でありながらも、息つく暇もなく、飽きることもなく、最後までしっかりと見通すことができる。だが、観賞後には映像が脳裏を巡るものの、特に印象的なシーンをピックアップできないことに気付く。

      つまり、作品に淡白な印象を受ける理由は、原作のオリジナリティをできるだけ活かそうとした結果ではなかろうか。映画は小説のように、人物の相関、物語の背景などの詳細を描ききれない。結果として、かろうじて行間を説得するためにエピソードを選ばなければならないのだが、それだけではやはり、スクリーンと客席には温度差が生まれ、メッセージを伝え損ねる危険もある。加えて、地方新聞社としてのプライド、報道モラル、利を巡る争い、真実を伝えることへの想いなど、複雑な要素が絡んで成り立っている作品である。分からなければ読み返せる小説と違って、突き進むことしか知らない映像に、観賞者は距離を放されがちになってしまう。この手の作品は難しい。

      ところで、"クライマーズ・ハイ"とは、登山家が経験する、極限まで気分が興奮するために恐怖心が麻痺してしまうという精神状態のことだ。本作の醍醐味は、この"クライマーズ・ハイ"よろしく、怒号が飛び交う編集局員の遣り取りや奮闘の様子に、異常なまでの興奮を得ることができる点だ。作品の緊張感や逼迫感もここから生まれており、その源流は堤真一、堺雅人らを初めとした、いわゆる真っ当な"演技派"が名を連ねているところにある。演技を感じさせない演技、と書くと言葉が拙いが、演技には演技っぽさがあると思い込んでいるから、かえってスクリーンの会話や挙措動作が自然であると、嬉しい違和感を覚える。本作はまさにその象徴だ。遠藤憲一演じる社会部部長「等々力」が、若手記者を説教するシーンがあるのだが、「なに、お前ら、無線を欲しがってるんだって?」というその他愛のない一言に鳥肌が立ってしまった。業界こそ違えど、自身の会社生活に熱い血を流してくれるようであった。"クライマーズ・ハイ"という登山用語や、ビリー・ワイルダー監督「地獄の英雄」の一節がキーになったりと、伏線の切れ味もよい。

      作品の切り口が記者の視点ということもあって、日本航空123便墜落事故を知るための教材としては、婉曲的ともいえる。とは言え、決して忘れてはいけない事故である、ということを再認識することができた貴重な作品であった。最後となったが、この事故で亡くなった520名の乗員・乗客の方々の冥福と、生存された4名の方々の多幸を心より祈る。

    ● 製作代表 : Be Wild
    ● 日本配給 : 東映 / GAGA Communications
    ● 世界公開 : 2008年07月05日 - 日本
    ● 日本公開 : 2008年07年05日
    [PR]
    by movis | 2008-07-13 12:57 | 邦画
    大いなる陰謀 / Lions for Lambs
    ● 大いなる陰謀 / Lions for Lambs [アメリカ / 2007年]

    b0055200_2235696.jpg壮大なサスペンスでも、ダイナミックな戦争映画でもない。邦題にミスリードされ、観賞直後は退屈な作品だったと思った。だが、エピローグの余韻が尾をひく作品である。本作に答えはない。そうと知るにずいぶんと時間がかかってしまったが、実に感慨深い作品だ。



    監督と、「ステファン・マレー」役には、「モンタナの風に抱かれて」「スティング」のロバート・レッドフォード。「ジャスパー・アーヴィング」役には、"ミッション: インポッシブル"シリーズのトム・クルーズ。「ジャニーン・ロス」役には、「ディア・ハンター」「クレイマー、クレイマー」のメリル・ストリープ。「アーネスト・ロドリゲス」役には、「ミリオンダラー・ベイビー」のマイケル・ペーニャ。「アリアン・フィンチ」役には、「エイプリルの七面鳥」のデレク・ルーク。「トッド・ヘイズ」役には、アンドリュー・ガーフィールド。

    "If you don't STAND for something, you might FALL for anything"
    アメリカ、ワシントン。大統領の座を虎視眈々と狙う「ジャスパー・アーヴィング」上院議員は、テロ対策に対して野心的な持論を抱えている。世論を味方につけたいと考える彼は、高い信頼を置く女性ジャーナリスト「ジャニーン・ロス」とのインタビューを企画する。対テロ戦略を熱心に語る「アーヴィング」であったが、「ロス」はどこか猜疑的であった。アメリカ、カリフォルニア。歴史学教授の「ステファン・マレー」は、優秀な生徒だが怠惰が目立つようになってきた「トッド・ヘイズ」を呼び出す。「マレー」は説教の代わりに、過去に受け持った2人の生徒の思い出話を語り始めた。アフガニスタン、雪解けを待つ山岳地帯。現地の過激派に手を焼くアメリカ軍であったが、決定的な戦略の実行を前に、キャンプには緊張感が満ち溢れていた…。


      ロバート・レッドフォードが7年振りにメガホンをとった。彼はこれまでも、アメリカが抱えるさまざまな問題点を浮き彫りとさせる作品を築いてきたが、本作では、こうした姿勢の表現が極めて直接的である。2001年9月11日の出来事は、戦争に対する議論を加熱させてきた。ここへきて、イラク戦争に対して懐疑の念を抱く人々も増えてきている。戦地と上層部の温度差、戦争経験者の憂鬱と若者の無関心、自由と責任。本作は、こうした考えに対し、政治家とジャーナリスト、兵士、大学教授と若者と、異なる視点から作品を描き、一石を投じた。一見して全く繋がりが見えないエピソードが、とある共通点でスリリングに結びついていくユニークな作品だ。

      2008年1月、航空機の中で手にとった某航空機内誌に、映画評論家である森山京子氏とロバート・レッドフォードの対談記事が掲載されていた。記事には、本作製作への取り組みには迷いがあったこと、戦争に対して賛否を主張するつもりはないことが語られている。作品は映像ではなく、対話や言葉がメインとなってくる。レッドフォードにも、観客に受け入れられるだろうか、という不安はあったようだが、それに敢えて挑戦した姿勢は評価したい。

      「アーヴィング」と「ロス」の駆け引きや攻防が続く戦場のシーンを見せておき、「マレー」教授と「トッド」の会話に切り替わる。印象は地味だが、もっとも注目すべきは、この「マレー」と「トッド」のエピソードである。作品は、社会レベルで大きく問題点を語っておき、それに対して個人レベルで問いを投げかけてくる。「トッド」は若者のシンボルとして重要な役柄であり、政治への不信や不満を的確に代弁してくれる。だからこそ、「マレー」がどう切り替えしてくるか、に期待を持つ。しかし、レッドフォードは全てを語らない。

      本音を述べると、観賞直後は作品自体をすんなりと受け入れることができなかった。思った以上にセリフ回しばかりで、戦闘シーンもチープであった。ただ、退屈だった、と吐き捨てられなかったのは、エピローグの余韻がいつまでもつきまとったからである。前述の雑誌に掲載されていた記事でレッドフォードは、ドラマを通して質問を投げかけたかった、とも語っていた。ガヤガヤとセリフが飛び交うにも関わらず、終焉は寡黙の極みである。本作に答えはない。そうと知るにずいぶんと時間がかかってしまったが、これ以後、作品の重みがジワジワと理解できるようになってきた。

      万人に受け入れられるとは思えない。邦題に壮大なサスペンスやダイナミックな戦争作品を期待してしまうと退屈だろうが、実に余韻が尾をひく作品である。何が言いたいんだ、この作品は、と思わせることが本作の狙いだろう。レッドフォードは90分という時間をかけて、その答えを見出すための素材を与えてくれるのだ。

    ● 製作代表 : Andell Entertainment
    ● 日本配給 : 20th Century Fox
    ● 世界公開 : 2007年10月22日 - イギリス(第51回ロンドン映画祭)
    ● 日本公開 : 2008年04月18日
    [PR]
    by movis | 2008-04-27 22:51 | ドラマ
    フィクサー / MICHAEL CLAYTON
    ● フィクサー / MICHAEL CLAYTON [アメリカ / 2007年]

    b0055200_2302270.jpg社会派要素を含みながら、正統で、静かで、シックにサスペンスを魅せてくれる作品。常に映像から伝わる事実を整理して理解しなければならず、易しい作品とは言えないが、駆け引きは非常に緊張感がある。観る人を選ぶ作品だと思うが、私にとっては傑作であった。



    監督は、"ジェイソン・ボーン"シリーズで脚本に携わってきたトニー・ギルロイ。製作総指揮には、"オーシャンズ"シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ、「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ、ジェームズ・ホルト。製作総指揮と「マイケル・クレイトン」役には、ジョージ・クルーニー。製作と「マーティ・バック」役には、シドニー・ポラック。「アーサー・イーデンス」役には、「バットマン ビギンズ」のトム・ウィルキンソン。「カレン・クラウダー」役には、「コンスタンティン」のティルダ・スウィントン。

    "The Truth Can Be Adjusted"
    在職15年を経ても昇格の機会を見失い、従兄弟の「ティミー」が積んだ8万ドルの借金を肩代わりしなければならない。公私に苦悩を抱えた「マイケル・クレイトン」は、ニューヨークに社を構える大手法律事務所"ケナー・バック & レディーン"に所属するフィクサーであった。「クレイトン」の同僚である敏腕弁護士「アーサー」は、農薬メーカー"U.North"が抱える3,000億円の集団訴訟を担当していた。しかし、突然、彼の精神が倒錯してしまう。騒然とする事態を重くみた事務所の経営者「マーティ」は、「アーサー」の元へ「クレイトン」を送り込むのであったが…。


      "ジェイソン・ボーン"シリーズのトニー・ギルロイを筆頭に、スティーヴン・ソダーバーグ、ジェームズ・ホルト、アンソニー・ミンゲラら敏腕クリエーターが名を連ねる。また、製作総指揮には「マイケル・クレイトン」役のジョージ・クルーニー、製作には「マーティ・バック」役のシドニー・ポラックが参加している。両名の演技力と製作能力に対する高い評価は、今に始まったことではないけれども、本作もまた、彼らの多彩な才能が如何なく発揮されている作品のひとつといえる。2007年度、第80回アカデミー賞では7部門でノミネートを受けた。監督賞、作品賞、助演男優賞では、同年ノミネート作品の「ノーカントリー」にオスカーを奪われた形となったが、助演女優賞には「カレン・クラウダー」役で出演した、ティルダ・スウィルトンが選ばれた。

      3,000億円をかけた集団訴訟、事件に影を潜める陰謀と"フィクサー"の存在、作品は社会派要素とサスペンス要素を含んでいるものの、「エリン・ブロコビッチ」や「インサイダー」などの社会派作品が比較対象にならないのは、陰謀を真っ向から捉えた、極めて正統で、サスペンスを重んじた作品だからである。そうとは言え、やや分かりにくい作品であることは間違いない。プロットや登場人物の設定が精巧を誇っているが、映像から得た事実の整理と理解を繰り返していかなければ、一気に距離を置かれてしまう。漫然と「マイケル・クレイトン」の姿を追うだけでは、陰謀の実体ですら見過ごしてしまうかもしれぬ危うさを秘めている。しかし、これは物語の軸が見えてくれば、非常に緊張感、逼迫感のあるサスペンスを楽しめる、ということの裏返しだ。

      さて、ストーリー上では補助的ではあるものの、「クレイトン」の私生活に対する苦悩というのも見所のひとつである。"フィクサー"という影のある職務を遂行しながらも、決して人間を超越しているわけではない。そして、人間らしさが生々しく描かれている、という点は「クレイトン」にだけ当てはまるわけではない。「アーサー」が精神を倒錯させてしまう由縁というものも、きわめて人間的である。そういった意味では「カレン・クラウダー」を演じたティルダ・スウィルトンがオスカーを勝ち取った理由というのも、勝ち気なビジネス・ウーマンであっても精神的に非凡ではない、という人間味を表現していたからではないか、と思う。物語のステージは雲の上であるものの、駆け引きを織り成す人間そのものは、共感を誘うレベルまで緻密に描かれていた。

      かくいう私は、持ちうる頭をできるだけ使ったことが功を奏したか、作品を楽しめた口である。本作はサスペンスの傑作のひとつであると思う。ただ、観る人は選ぶだろう。大きな陰謀に対してのリアクションが、あまりに静かで、シックであるからだ。だからこそ、余韻がいつまでも頭を捕らえている。エピローグの「マイケル・クレイトン」は、目で何を捉え、頭で何を思うのか。

    ● 製作代表 : Samuels Media
    ● 日本配給 : MOVIE-EYE
    ● 世界公開 : 2007年8月31日 - イタリア(第64回ヴェネチア国際映画祭)
    ● 日本公開 : 2008年4月12日
    [PR]
    by movis | 2008-04-20 23:04 | サスペンス / ミステリー
    エリン・ブロコビッチ / Erin Brockovich
    ● エリン・ブロコビッチ / Erin Brockovich [アメリカ / 2000年]

    b0055200_151607.jpg実話に基づいた、「エリン・ブロコビッチ」という女性のサクセス・バイオグラフィー。テーマに社会派を掲げながらも、底抜けた明るさが印象的である。スカッとしたが、嫉妬もした。事を疑うこと、事を正そうとすること。バイタリティーのある人間はどうしてこうも輝いて見えるのか。



    監督は、"オーシャンズ"シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ。「エリン・ブロコビッチ」役には、「プリティ・ウーマン」「ノッティングヒルの恋人」のジュリア・ロバーツ。「エド・マスリー」役には、「オリエント急行殺人事件」「ドレッサー」のアルバート・フィニー。「ジョージ」役には、「サンキュー・スモーキング」「幸せのレシピ」のアーロン・エッカート。

    "She brought a small town to its feet and a huge corporation to its knees."
    預金残高は100ドルを切ってしまった。3人の子供が帰りを待っている。「エリン・ブロコビッチ」は、求職活動に必死だった。ミス・ウィチタという過去の栄光が彼女のプライドを高く押し上げていたが、なりふりかまっていられない。それでも、勝ち気で明け透けな性格が裏目に出てしまっていた。今日もまた、採用面接で不採用を言い渡された彼女にさらなる不幸が襲って…。


    監督スティーヴン・ソダーバーグが、事実にこだわった意欲作。「エリン・ブロコビッチ」という女性がひょんなことから舞い込んだ弁護士事務所での奮闘劇であり、エリン・ブロコビッチ本人もウェイトレス役で出演している。一見すると、映画ならではの良くできたサクセス・ストーリーだが、脚本にはほとんど脚色がほどこされていない、というから驚きである。退くを知らず、何事もグイグイと押し切ってしまうパワフルな女性を演じきったジュリア・ロバーツは、この作品でアカデミー主演女優賞を勝ち取った。

    この物語が事実であるというなら尚更、「エリン・ブロコビッチ」の横暴で粗野な振る舞いが気になるところだが、なかなか憎めない。もちろん、彼女はヒーローなのだが、そこに社会の不条理や理不尽を納得しない頑固さはあっても、偽善はない。恩着せのない、それこそ裏表のない彼女の性格が、多くの人々に受け入れられていく様は爽快であった。

    PG&Eを相手に集団訴訟を起こしていく、という堂々たる社会派テーマを掲げながらも、「エリン・ブロコビッチ」と「マスリー」の遣り取りに見られるような底抜けた明るさが作品の特徴でもあるが、おそらく作品では描かれていない多くの障壁があったに違いない。「インサイダー」ほどの四面楚歌で絶望的な危機感は求めないにしても、万事がうまく行き過ぎているように見受けられる点に勿体なさを感じている。

    男女を問わず、バイタリティーを持った人間は何と輝いて見えることか。同じ土俵には立てずとも、「エリン・ブロコビッチ」に学んだ点は多い。

    ● 製作 : Jersey Films
    ● 配給 : Sony Pictures Entertainment
    ● 公開 : 2000年 (アメリカ)
    [PR]
    by movis | 2008-01-08 04:48 | ドラマ
    インサイダー / THE INSIDER
    ● インサイダー / THE INSIDER [アメリカ / 2000年]

    b0055200_2333721.jpg重厚感たっぷり。シリアスな社会派ドラマとあって万人受けは期待できないが、最高に興味深い。完全に心をつかまれた。企業と個人。利益と正義。実話に基づいた「大人の事情」を、マイケル・マンがストイックに描く。苦難に対峙し、信念やプライドを体現する者たちはかっこいい。



    監督は、「ヒート」「コラテラル」のマイケル・マン。「ローウェル・バーグマン」役には、「トゥー・フォー・ザ・マネー」「ゴッドファーザー」シリーズのアル・パチーノ。「ジェフリー・S・ワイガンド」役には、「L.A.コンフィデンシャル」「グラディエーター」のラッセル・クロウ。「マイク・ウォーレス」役には、「サウンド・オブ・ミュージック」「ある日どこかで」のクリストファー・プラマー。「ライアン・ワイガンド」役には、「コットン・クラブ」「ヒート」のダイアン・ヴェノーラ。

    "Warning: Exposing the Truth May Be Hazardous"
    アメリカ4大ネットのひとつ、CBSが放送する人気ニュース・ショー「60ミニッツ」。そのプロデューサーである「ローウェル・バーグマン」の元にPhilip Morris社の社内極秘資料が届く。これを基に「タバコ」をテーマとしたコンテンツを構想。解説者を求めてたどり着いたのは、業界3位のB&W社で研究開発担当副社長を務める「ジェフリー・ワイガンド」だった。彼らはホテルの一室で接触する。この瞬間から、信念とプライドをかけた闘いが始まっているとも知らず…。


    今でこそ、タバコのパッケージには警告文が記載され、喫煙者も有害性を認めている。タバコメーカーが賠償金を支払うケースも珍しくない。しかし、この作品の舞台である90年代初頭は、タバコメーカーがあらゆる訴訟を必勝していたという。

    アル・パチーノやラッセル・クロウら、出演陣の名前に不安はない。「安心して観られる作品だ」と思った。とんでもなかった。なんと作中で登場する企業名、人物名は全て実名である。ハラハラするような会話、シーンの連続に、最初の安心感も消え失せてしまった。次第に自分の顔が強張っていくのが分かった。アル・パチーノは相変わらず渋いのだけど、ラッセル・クロウが演じる不安定な役柄が更に真実味を引き立てているようにも感じた。

    硬派で干渉を受け付けない「60ミニッツ」に、こんなエピソードがあるとは知らなかった。社会的正義。それがどんなに正論であっても、排除されてしまうこともある。信念やプライドを言葉にするのは簡単だが、行動で示すのは困難だ。守るべきものもある。しかし、そんな苦難に正々堂々と立ち向かっていく者たちの姿が本当に渋くてかっこよかった。マイケル・マンは、そんな「男の映画」を作るのが上手い。そして更なる魅力はモデルとなった実話が存在することだ。

    アル・パチーノは珍しく拳銃を握らない。派手なアクション・シーンも皆無。リアリティに溢れ、低めのトーンで描かれる正統派ソーシャル・ドラマであるだけに、万人に受け入れられるとも思えない。それでも、マイケル・マン独特の丁寧なタッチやテンポの良さも手伝って、約160分の長尺も苦痛ではなかった。CSRやコンプライアンスの在り方についても深く考えさせられた。傑作だ。

    余談だが、マイケル・マンと手を組むミュージック・コンポーザは作品によって違うのだけれど、どれも本当にかっこいい。特にエンドロールで使われる楽曲には、心を鷲づかみにされてしまう…。

    ● DVD

    インサイダー (Amazon.co.jp)
    [PR]
    by movis | 2006-05-05 04:34 | ドラマ - その他