● 逃亡者 / THE FUGITIVE [アメリカ / 1993年]
テンポも良ければ、展開もニュートラル。重量感たっぷりのサスペンスだが、何度でも魅入ってしまう。ハリソン・フォードの危機感迫る演技も魅力的だが、何にもまして注目は、オスカー像を手に入れたトミー・リー・ジョーンズ扮する「ジェラード」捜査官の存在だ。
監督は「沈黙の戦艦」「コラテラル・ダメージ」を手掛けたアンドリュー・デイビス。「インディ・ジョーンズ」シリーズや、「エアフォース・ワン」で知られるハリソン・フォードが扮するは「リチャード・キンブル」。「サムエル・ジェラード」役には、この作品のサイド・ストーリー「追跡者」でも同じ役柄で主演し、「メン・イン・ブラック」シリーズでも有名なトミー・リー・ジョーンズ。また、ジュリアン・ムーアやジョー・パントリアーノも出演している。
アメリカのTVシリーズで人気を博した「逃亡者」をオリジナルストーリーで映画化した作品。妻を殺害したとして死刑を課せられた外科医「リチャード・キンブル」。彼は容疑を晴らすため、真犯人を突き止めるため、捜査網からの逃亡を試みる。そして、この逃亡犯を「サムエル・ジェラード」捜査官が執拗な追跡を続け…。
起承転結。細部にいたるまで丁寧に作りこまれた印象を抱く。重量感たっぷりの正統派サスペンスだが、淡々と進む展開は非常にニュートラルで、時間を忘れて作品を堪能できる。節々で挿入されるアクションシーンも迫力満点で、なかなか飽きがこない映画のひとつに挙げたい。
容疑を晴らすため、真犯人を暴くため、決して捕まらんとするハリソン・フォードの危機感迫る演技が良い。脇役にも存在感があって、キャストのまとまりも逸脱だ。そして、忘れてはいけないのが、執拗に「キンブル」を追い詰める「ジェラード」捜査官の存在だ。ストイックで、渋くて、真実を見んとする軸がブレない。主演をも食わんとするトミー・リー・ジョーンズの演技力には脱帽だ。この作品で彼が手にしたオスカー像こそが、好演何よりの証明だろう。
実は、この作品にはモデルとなった事件がある。「キンブル」と同じような立場に立たされた男性は、数年に渡って服役を続け、DNA鑑定によってようやく無罪釈放となった。いつの時代にも、どんな国にも、「ジェラード」捜査官のような存在を求めたい。
● 関連作品 in the MOVIS
追跡者 [05.01.31.]
● DVD
逃亡者 (Amazon.co.jp)