人気ブログランキング | 話題のタグを見る
Top
MOVIS
one for all, all for one
Will Be Next to ...
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 1st season
  • LIE TO ME 嘘の瞬間 2nd season
  • アマルフィ 女神の報酬
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 1st season
  • ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ 2nd season
  • インセプション
  • 最近のエントリ
    検索
    カテゴリ
    タグ
    タイトル別カテゴリ
    ■ 音順カテゴリ


    ■ 特集
    映画で音楽を聴く

    ■ 公開年度別カテゴリ

    sorry...
    restorin' soon ...
    最新のトラックバック
    フォロー中のブログ
    その他のジャンル
    ファン
    記事ランキング
    ブログジャンル
    画像一覧
    リンク
    ベンジャミン・バトン 数奇な人生 / The Curios Case of Benjamin Button
    ● ベンジャミン・バトン 数奇な人生 /
        The Curios Case of Benjamin Button [アメリカ / 2008年]

    ベンジャミン・バトン 数奇な人生 / The Curios Case of Benjamin Button_b0055200_1932362.jpg年齢を重ねるたびに身体が若返っていく男の数奇な生涯を、デヴィッド・フィンチャーが不思議なファンタジータッチで描く。人と出会うこと、互いに影響を与え合っていくこと、人を愛すること。当然のことのようで大切な、人生の哀歓を優しく諭してくれる作品だった。



    監督は、「セブン」「ファイト・クラブ」のデヴィッド・フィンチャー。「ベンジャミン・バトン」役には、「バーン・アフター・リーディング」のブラッド・ピット。「デイジー」役には、「アビエイター」のケイト・ブランシェット。「エリザベス・アボット」役には、「フィクサー」のティルダ・スウィントン。「トーマス・バトン」役には、「スナッチ」のジェイソン・フレミング。「ムッシュ・ガトー」役には、「ゾディアック」のイライアス・コティーズ。「キャロライン」役には、ジュリア・オーモンド。「クィニー」役には、「ハッスル & フロウ」のタラジ・P・ヘンソン。「デイジー(6歳)」役には、エル・ファニング。

    "Life isn't measured in minutes, but in moments"
    嵐を予感させる強い雨が病院の窓を叩く。ベッドに横たわった老女は自身の死期を悟った。傍らに付き添う若い女性は、老女の頼みで日記と思われる一冊のノートを読み上げる。1918年、ルイジアナ州のニューオリンズ。第一次世界大戦が終結し、生まれるには最高の夜と思しき日に、日記の著者は生を受けた。しかし、顔はまるで老人のように皺にまみれ、80歳に相当するほど弱った身体の赤ん坊であった。彼の父親は、赤ん坊の容姿と妻の死にショックを隠せず、老人養護施設の前に我が子を置き去りにしたのであった。生まれながらにして人とは違う境遇に生まれた彼にとって幸いであったのは、この施設で働く「クィニー」が惜しみない愛情を与えてくれたことだった。「ベンジャミン」という名を与えられた彼は、数奇な人生を歩むこととなる…。


      原作は、「The Curios Case of Benjamin Button」というタイトルで執筆されたF・スコット・フィッツジェラルドの短編小説。本作の脚本には、「フォレスト・ガンプ/一期一会」「インサイダー」のエリック・ロス。第81回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、ブラッド・ピッドの主演男優賞、タラジ・P・ヘンソンの助演女優賞をはじめ13部門でノミネートを受け、その内、美術賞、メイクアップ賞、視覚効果賞で最優秀賞に選ばれた。

      第一次世界大戦終結の年から、21世紀を生き抜いた一人の男の生涯をたどる。ただ、彼の人生が他の人の人生と圧倒的に違うのは、年を重ねるたびに肉体が若返っていく点だ。ピーター・ドナルド・ダバラメンティ二世、ロバート・タワーズ、トム・エヴァレットらの協力を得ながら、「ベンジャミン・バトン」が違和感なく若返っていく様は視覚的に面白い。ブラッド・ピットは特殊メイクの為に長時間座っていることが嫌だった、と語っているが、アカデミー賞ノミネートにヴィジュアル・エフェクトに関する部門が多いことは、彼らの苦労の成果だといえる。

      人間は一生のうちに出会う人数はある程度決まっている、という話を聞いたことがある。本作は、哀愁ただようファンタジー作品でありながらも、自分を理解してくれる人間の有難み、その人との出会いの稀少さ、といった人間の繋がりの温かさが強烈に迫ってくる。「ベンジャミン」の身体は歳をとって若返っていくわけだが、他人の人生と異なる点というのは、まさにそれだけだと言ってもよくて、彼も他人と同じように懸命に人生を生き抜いていく。しかし、やはり、他人と唯一違う彼の体質が、人生のあらゆる局面でジレンマとなっていく。だからこそ、「ベンジャミン」に同情的になってしまい、本作は暗調ともとれるのだが、「ベンジャミン」の透き通った人間性が不思議な安心感を醸し出す。

      肉体的には老人であった「ベンジャミン」幼少の頃、彼は「デイジー」と出会った。周囲の怪奇な視線をもろともせず、子供の2人だけが互いの純心を見抜く。だが、「ベンジャミン」は自身を巡る不遇を誰よりも理解している。彼にとっては叶わぬ恋だった。彼は何かを求めて世界に飛び出した。長い旅路の中で、"アーティスト"や"泳ぐ人"などと出会っていく。彼の真っ直ぐな生き方や疑いようのない誠実さは、彼らとの出会いによって熟成されていき、また相手も「ベンジャミン」から何かを学びとっていく。やがて、「ベンジャミン」と「デイジー」のヴァイタル・バランスが一瞬均衡を保ったとき、運命が彼らを結びつけた。だが、「ベンジャミン」は"永遠のものなんてない"と悲観的になるのだが、「デイジー」は違った。

      誰もがみな、自分は人とは違うと思うもの。しかし、通る道は違っても、行き着く先は同じ。作品が強調するこのメッセージが、「ベンジャミン」と「デイジー」を介して、ドラスティックに心に訴えかけてくる。"Button(ボタン)"を掛け違えながらも、やがて正しいボタンホールにたどり着くように。カミナリに七回打たれる人、ボタンを作る人、母親、踊る人、すべての出会いが美しい。漫然と人と出会い、人生を生きてきたような気がするが、本作の観賞でハッとした。つらいこと、頭悩ませること、生きていくうえでの憂鬱は多い。でも、もしかしたら「ベンジャミン」と同じくらい、自身のこれまでの出会いは奇跡的で、相互にいい影響、悪い影響を与え、与えられながら、無二で数奇な人生を歩んでいるのかもしれない。こんなことを思いながら、なぜだか目頭が熱くなった。理論的でも宗教的でもない。人生はすばらしい、そう温かく教えてくれた作品だった。

    ● 製作代表 : The Kennedy/Marshall Company
    ● 日本配給 : Warner Bros.
    ● 世界公開 : 2008年12月10日 - オーストラリア(シドニー/プレミア)
    ● 日本公開 : 2009年02月07日
    by movis | 2009-03-14 19:41 | ファンタジー