● ある日どこかで / SOMEWHERE IN TIME [アメリカ / 1981年]
どこまでも上品で、ロマンティックな作品だった。クリストファー・リーブ、ジェーン・シーモアの好演は言うに及ばなくても、脇を固める登場人物の切れ味も良い。SFファンタジーとしては役不足だけれども、透明感があって、観るものの心を掴む切なさが魅力的だった。
監督は「JAWS/ジョーズ2」のジュノー・シュウォーク。「リチャード・コリアー」役には、「スーパーマン」シリーズのクリストファー・リーブ。「エリーズ・マッケナ」役には、「007/死ぬのは奴らだ」のジェーン・シーモア。「W.F.ロビンソン」役には、「ナショナル・トレジャー」「アレキサンダー」のクリストファー・プラマー。「ローラ・ロバーツ」役には、テレサ・ライト。「アーサー」役には、ビル・アーウィン。「老婦人」役には、スーザン・フレンチ。
"Beyond fantasy. Beyond obsession. Beyond time itself... he will find her."
1972年。ミルフォード大学に学び、脚本家を目指す「リチャード・コリアー」。彼の処女作が成功をおさめ、祝賀パーティが開催された。喜び沸き立つ「リチャード」の背を「老婦人」が叩く。彼女は彼の手に懐中時計をおさめると「私のところに戻って来て」とささやいてその場を後にした。滞在先である「グランド・ホテル」に戻った「老婦人」は、「リチャード」の脚本「華やかな恋の季節」を手にとると、そっと彼の名前を指でなぞるのだった。8年後、スランプに陥った「リチャード」は当てなく旅に出る。彼は「グランド・ホテル」を滞在先に選ぶ。暇を持て余した彼は、ふと史料室に立ち寄ると、そこにかけられた女性のポートレートに心を奪われてしまうのだった…。
時間を旅するSFファンタジーに、ロマンス要素が含まれる作品は少なくない。この作品も同じではあるが、むしろ逆。タイム・トリップに関してはあっさりと、ロマンスが中心に描かれている。その点で、タイム・パラドックスというべきか時間旅行の理論には荒さが目立つけれども、難しい話は抜きにして、上品で透明感のあるロマンスが非常に魅力的だった。
人目見たポート・レートに心が高ぶっていく「リチャード」の高揚感。立ち振る舞いに気品漂う「エリーズ」の上品さ。クリストファー・リーブ、ジェーン・シーモアの演技が素敵だ。脇を固める登場人物の切れ味も抜群だった。何度も流れるラフマニノフの「ラプソディー(パガニーニの主題による狂詩曲)」も、使われる場面によって不思議と表情を変えて、作品に哀愁を添えている。
どんな方法を持ってしても、思いを寄せる相手に会うことが出来ない。「リチャード」に感情移入したが最期。これ以上ない切なさが心に痛かった。白い靄がかかったように幻想的な作品だが、いつまで経っても鮮明に心をつかんで離してくれそうにない。
● DVD
ある日どこかで (Amazon.co.jp)