● HERO [日本 / 2007年]
2001年にフジテレビ系列で放映されたドラマ『HERO』の映画化。『なぜあえて劇場で…』という想いを抱くも、結局は見入ってしまった。だが、この作品で初めて『HERO』に触れる、という方には疎外感を得る内容かも…。
監督は、数々の人気邦画ドラマの制作に携わる鈴木雅之。「久利生公平」役には、「2046」「武士の一分」の木村拓哉。「雨宮舞子」役は、松たか子。「芝山貢」役は、阿部寛。「中村美鈴」役は、大塚寧々。「遠藤賢司」役は、八嶋智人。「江上達夫」役は、勝村政信。「末次隆之」役は、小日向文世。「牛丸豊」役は、角野卓造。「鍋島利光」役は、児玉清。「蒲生一臣」役は、松本幸四郎。「花岡練三郎」役は、森田一義。「滝田明彦」役は、中井貴一。「泉谷りり子」役は、綾瀬はるか。「カン・ミンウ」役は、イ・ビョンホン。
"久利生公平、最大の危機。"
山口地検・虹ヶ浦支部から、6年振りに東京地検・城西支部へと戻った型破りの検察官「久利生公平」は、離婚調停中で落ち着きのない同僚「芝山貢」に代わって、彼が起訴した傷害致死事件の公判検事を担当することに。新聞にはさほど大きな報道がなされなかった "小さな事件" であったが、容疑者の弁護を刑事事件における無罪獲得数日本一の「蒲生一臣」が担当することを知り、驚愕する城西支部の面々。さらには、勾留中の取調べでは全面的に犯行を認めたはずの容疑者も、初公判では容疑を真っ向から否定し、困惑する「久利生」。「蒲生一臣」の戦術に追い詰められていく「久利生」は、捜査現場で特捜部が監視の眼を光らせていることに気付き…。
フジテレビ系列で、2001年に全11話でレギュラー放送、2006年には特別ドラマとして放送された人気TVシリーズ『HERO』の映画化作品。型破りな検察官「久利生公平」と彼の検察事務官「雨宮舞子」を中心に、同僚検察官たちとの活動をコメディ・タッチで描く。軽快でパンチの効いた服部隆之による BGM もさながらに、テンポ良く展開する起承転結の爽快さがドラマを懐古させる。人気ドラマから劇場作品を生む国内メディアの流行に対しては遠巻きに視線を送っていたが、これは満足できた。
ところで、本作は、松本幸四郎、森田一義、イ・ビョンホン、国仲涼子などのゲストが加わって、とってつけたような金の使い方がされているが、ストーリーはドラマから完全に独立しているわけではない。
なぜ「雨宮舞子」が『6年も、6年も』と愚痴をこぼすのか、「滝田明彦」と「泉谷りり子」とは何者なのか、山口地検に異動していた「久利生」が「花岡練三郎」とどういう因縁を生んだのか。これらの舞台設定はレギュラー放送の内容では足りず、2006年の特別ドラマの内容まで網羅していないと理解ができない。『HERO』好きにはたまらない構成ではあるが、"一見さん" はメイン・ストーリーを追えても、伏線は完全に理解できない作品になってしまっている。『好きな人向け』と言われるのであれば、何も言えないが……。
『HERO』ビギナーには手厳しい作品ではあるが、これを機にドラマシリーズを観賞してみるのも良い。ドラマでは観られない点を挙げれば……喫煙する木村拓哉だろうか。
● HERO 公式サイト(日本)
http://www.hero-movie.net/