● 狙撃者/ボーン・アイデンティティ / The Bourne Identity [TV / アメリカ / 1988年]
マット・デイモン主演の"ジェイソン・ボーン"シリーズと同じく、ロバート・ラドラムの『暗殺者』を原作としたTVムービー。序盤はスパイ・アクションよろしく、スピーディに展開し、ストーリーもなかなか秀逸。しかし、華を添えるだけであってほしいロマンスの主張が過ぎる…。
監督は、TVムービーを数多く手掛けるロジャー・ヤング。「ジェイソン・ボーン」役には、「タワーリング・インフェルノ」のリチャード・チェンバレン。「マリー・サン・ジャック」役には、"チャーリーズ・エンジェル"のTVムービー・シリーズに出演したジャクリン・スミス。「ジェフリー・ウォッシュバーン」役には、"インディ・ジョーンズ"シリーズのデンホルム・エリオット。
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荒れ狂う海に漂う一隻のクルーザー。大きく揺れる甲板では銃声が轟き、船室から飛び出した1人の男が闇に包まれた水面に吸い込まれていった。フランス南海岸の小さな村の老医師「ウォッシュバーン」の下に、銃創を負った男が担ぎこまれる。治療の甲斐もあり、男は一命を取り留めたが、彼は一切の記憶を喪失した。「ウォッシュバーン」にも成す術はなく、男の素性を知る手掛かりは、彼の臀部に埋め込まれたマイクロ・フィルムだけであった。そこには、"ゲマインシャフト銀行 チューリッヒ"という文字と、不規則な数列が小さく刻印されていて…。
マット・デイモン主演の "ジェイソン・ボーン" シリーズ初作「ボーン・アイデンティティー」と原作、タイトルが同一であり、前後編でメディア放送されたTVムービー。邦題の "ボーン・アイデンティティ" の文字は、DVDのリリース時に添えられた。90年代、日本で民放放映された際には「スナイパー/狙撃者」というタイトルであった。
ロバート・ラドラムの『暗殺者』という原作を共用しているだけあって、「ボーン・アイデンティティー」と酷似しているシーンも多い。ストーリーの展開や結末、ひいては"ジェイソン・ボーン"の個性などの印象は両作品で異なる。また、この作品を観賞しても、マット・デイモンの"ジェイソン・ボーン"シリーズの観賞に支障はない。(この作品がネタバレにはならない)
影のあるプロローグを置いて、対話式に、極めてゆったりと展開していく。踊るようなアクションが魅力の「ボーン・アイデンティティー」を先入観としてしまうと、冗長ともいえる。しかし、記憶を求めて苦悶する「ボーン」の葛藤や、彼を取り巻く裏事情など、物語自体を噛みしめるように楽しめる。フィルム・ノワールとして、なかなか面白い。
ところで、ロマンスも込められているだが、これが少々作品をかき乱しているように思う。ストーリーに華を添える程度の控えめさが欲しかった。哀愁漂うロマンス、センチメンタルなロマンス、と評価してもフォローしきれない、この点だけが残念だった。
● 関連作品 in the MOVIS
ボーン・アイデンティティー [2003年]
● 製作 : Alan Shayne Productions
● 配給 : N/A
● 公開 : TV / 1988年5月8日 - アメリカ