● 大停電の夜に / UNTIL THE LIGHTS COME BACK [日本 / 2005年]
綺麗な映像には魅力があるし、雰囲気も美しい。さえぎるもののない緩さも手伝って、クリスマスのムードを楽しむ意味では、打ってつけの作品。こう評価してしまえば、それに続ける言葉が難しい。少なくとも、物語に浸りたい、という思いをとってみれば物足りなくて…。
監督と脚本には、「東京タワー」の源孝志。「木戸晋一」役には、豊川悦司。「佐伯遼太郎」役には、田口トモロヲ。「佐伯静江」役には、原田知世。「叶のぞみ」役には、田畑智子。「草野美寿々」役には、井川遥。「李冬冬」役には、阿部力。「大鳥銀次」役には、吉川晃司。「杉田礼子」役には、寺島しのぶ。「国東義一」役には、宇津井健。「国東小夜子」役には、淡島千影。「田沢翔太」役には、本郷奏多。「梶原麻衣子」役には、香椎由宇。
"光が消える。あなたを感じる。"
12月24日、クリスマス・イヴ。夜の帳が降り始めた頃、東京を中心とした関東広域を大規模の停電が襲った。少し訳ありな12人の男女、それぞれが灯した想い。こんな夜だからこそ、語りたくなる真実がある…。
12人の男女が繰り広げる6つのショート・ストーリーが、クリスマス・イヴの東京が大停電に見舞われたら、という設定の下、次第にリンクしていく群像ロマンス。キャンドル・ショップの店主「叶のぞみ」が、その晩に閉店すると噂される向かいのジャズ・バーのマスター「木戸晋一」に話かける、という展開を以って、映像美が加速する。うっとりするようなキャンドルの灯りの魅力は映像を通しても活き活きとしており、観ている人間にも言葉にしがたい高揚感を与えてくれる。登場人物の個性や台詞は知的で品があり、語り口も優美であるので、クリスマスのムードを楽しむための作品としては非常に優秀な作品である。
そう評価してしまえば、物語への言及は不要なのかもしれないが…。とにかく、爽やかではない。ビターなロマンスとも言い切れず、何とか円満たる結末を、とストーリーの展開を当たり障りない方向へと強引に導いているようにも思う。こういう偶然性のある人間関係も、狭い世の中には有り得るかもしれない、と6つのショート・ストーリーのプロローグを眺め見ているうちが最も華がある。それぞれが不思議な接点でリンクしていくわけであるが、若干の消化不良を来たしており、中にはほぼ蔑ろにされてしまっているストーリーがある点は非常に悲しい。最後に、いささか作品の去り際は良いタイミングを逃してしまっているように思う。あのエピローグはムードぶち壊しだ…。
● 製作 : Asmik Ace Entertainment
● 配給 : Asmik Ace Entertainment
● 公開 : 2005年 (日本)