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    七人の侍
    ● 七人の侍 [日本 / 1954年]

    七人の侍_b0055200_6155426.jpg言わずとしれた巨匠、黒澤明を代表する作品のひとつ。時代劇やアクションの要素が高精度に描かれているのはもちろんのこと、これらを支える伏線の存在感が非常に鋭い。3時間を超える長尺が苦痛に感じなかった。名作と称される由縁、確かにこの目で見た。



    監督は、「羅生門」「隠し砦の三悪人」の黒澤明。「勘兵衛」役には、志村喬。「菊千代」役には、三船敏郎。「七郎次」役には、加東大介。「五郎兵衛」役には、稲葉義男。「平八」役には、千秋実。「久蔵」役には、宮口精二。「勝四郎」役には、木村功。「志乃」役には、津島恵子。「利吉」役には、土屋嘉男。「万造」役には、藤原釜足。「与平」役には、左ト全。「茂助」役には、小杉義男。「儀作」役には、高堂国典。

    [NO TAGLINE]
    戦国時代、各地で勃発した戦乱はさまざまな問題を引き起こした。野武士の横行もそのひとつである。とある貧しい山村、農民たちは、野武士との懸命な談合によって命だけは守ったものの、あらゆるものを奪われてしまった。そんな折、1人の農民が野武士の新たな奇襲計画を知り、村は恐怖と絶望に包まれる。我慢も限界に達した若い百姓「利吉」は、野武士との対峙を提案する。周囲の賛同をなかなか得ることができなかったが、村の長老「儀作」から、空腹の侍を雇うという策が立つ。早速、「利吉」、「万造」、「与平」、「茂助」は侍を定めるべく街へ出掛けるが、飯を食わせるから野武士を討伐してくれ、という条件に耳を貸す者はなかなか現れず…。


      言わずと知れた巨匠、黒澤明を代表する作品のひとつ。1954年、第15回ヴェネチア国際映画祭では、監督を評価する銀獅子賞を受賞した。この作品は国内外の業界に大きな影響を与えた。同じ志をもつ7人が集う、というモチーフが「荒野の七人」や"スター・ウォーズ"シリーズで応用されていることも有名である。リアリティに拘り、納得できるまで作品を作り上げていく、という黒澤のストイックな姿勢が、本作にも堂々と反映されている。

      単刀直入に、面白い。俯瞰すると知的で緻密なプロットの上に作品が構成されていることが分かるのであるが、随所でコメディしかり、黒澤のユーモアが光っている。百姓に雇われた侍が野武士から村を守っていく、という軸をしっかりと見捉えながら、伏線は完璧に回収している。補助的なエピソードに意識が振られるのであるが、結局はうまく本流に結びついていくのである。本作では、こうした快感を幾度と得ることができる。作品の中には喜怒哀楽が散りばめられているのであるが、とりわけ楽しいシーンの印象が強い。思わず、ドッと笑ってしまうようなものも少なくない。こうした黒澤のユーモアを、演者は正確に表現している。その中でも「菊千代」演じる三船敏郎のハマり様は奇跡を見ているかのようであった。

      強きが弱きを助ける、というシンプルな作品に落ち込んでいないのも良い。序盤、勝ち気だが傲慢な侍と臆病で卑屈な農民はなかなか相容れないのであるが、次第に相互の先入観を捨て、理解を示していく。こうした作品のテーマになりそうなドラマ要素も、本作に至っては作品を盛りたてるための素材であるのだから、ただただ感銘を受けるばかりである。ところで、さて野武士が攻め入ろうか、という折に、侍が農民を嫌悪するエピソードがあるのだが、その原因がすぐには分からなかった。これに代表されるような、かつての日本人が持っていた、近代では淘汰されてしまったものの考え方や価値観が発見できる点も実に興味深かった。

      本作はあくまでも時代劇であり、アクションである。数々のスタイルを確立した黒澤明であるから、これらの要素が高精度を誇っているのは言うまでもない。しかしながら、作品はそれだけで成り立っているわけではない。笑いあり涙あり、と言う言葉がこれほどまでに至言である作品は稀である。無言実行、寡黙で自身に厳しい「久蔵」に憧れた。大げさかもしれぬが、性格も生き方も違う七人の侍の中から、人生のロールモデルを探すのも良い。名作と称されるその由縁、この目でしかと見た。

    ● 製作代表 : 東宝
    ● 日本配給 : 東宝
    ● 世界公開 : 1954年08月 - イタリア(第15回ヴェネチア国際映画祭)
    ● 日本公開 : 1954年04月26日
    by movis | 2008-04-29 06:20 | 邦画