● ミスト / The Mist [アメリカ / 2007年 /
R-15]
フランク・ダラボンとスティーヴン・キングが再び顔を合わせた。思慮深い、文字通りの衝撃の結末が待ち受けている。予備知識を得ずに観賞することをお勧めしたいが、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のような感動作を期待してしまうと…。
監督は、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のフランク・ダラボン。原作は、スティーヴン・キングの『霧』。「デヴィッド・ドレイトン」役には、「フェイス/オフ」「ドリームキャッチャー」のトーマス・ジェーン。「カーモディ」役には、「ジョー・ブラックをよろしく」のマーシャ・ゲイ・ハーデン。「アマンダ・ダンフリー」役には、「マジェスティック」のローリー・ホールデン。「ブレント・ノートン」役には、「グローリー」のアンドレ・ブラウアー。「オリー・ウィークス」役には、「エバー・アフター」のトビー・ジョーンズ。「ビリー・ドレイトン」役には、「バベル」のネイサン・ギャンブル。「ダン・ミラー」役には、ジェフリー・デマン。「アイリーン・レプラー」役には、フランシス・スターンハーゲン。「ジム・グロンディン」役には、ウィリアム・サドラー。「サリー」役には、アレクサ・ダヴァロス。
"Fear Changes Everything"
田舎町に住まうイラストレーターの「デヴィッド・ドレイトン」は、締切りが間近に迫る映画のポスターに仕上げの筆を入れていた。しとしとと窓ガラスを打っていたはずの雨は、次第に強くなり、雷を伴って町の灯りを奪っていく。記録的な大嵐になった。翌朝、半壊の一帯にはしゃぐ息子の「ビリー」であったが、「デヴィッド」の妻「ステファニー」は湖畔に浮かぶ奇妙な霧を不安がった。とりあえず物資を得るため、「デヴィッド」は「ビリー」と隣人「ブレント」と共に、混雑したスーパーマーケットを訪れた。すると、この界隈にも霧が立ち込めるようになる。騒然とする店内に悲鳴が響く。血を流した中年男性が店内に飛び込み、霧の中に何かがいる、と叫んだのであった…。
「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」でコンビを組んだ、フランク・ダラボンとスティーヴン・キングが再び顔を合わせた。不可解な霧に覆われてパニックになっていく人々の様子を、ホラータッチによってスリリングに描いた作品。本作は、予備知識を得ないほうが堪能できるように思うが、若干のグロテスクと刺激の強い心理描写を伴っているために、レイティング(R-15)設定には留意されたい。
本作は正直に怖い。嵐のあと唐突に霧が覆う。その舞台の整え方が、例えば「首都消失」や「
クローバーフィールド/HAKAISHA」よりもニュートラルで、これらよりも閉塞感がある。さらに、単純に"パニック作品"という言葉で説明がつかない理由は、得体の知れぬ不安を描いておきながら、人間の心理の暴走も事細かに表現しているからである。不安から逃れたいのは皆同じで、そのためになら協力も惜しまないのだが、希望や救いの得方は人間によって違う。マジョリティはマイノリティを排除しようとする。狂気は次々と狂気を生んでいく。このようにして、外部と内部に異種の恐怖を映し出しているために、逃げ場がない。
本作で最も印象的であるのは、やはり結末である。五里霧中。これはあまりに衝撃的であった。言葉では何とも表現しがたいが、地面に叩きつけられるような惨痛もあれば、上空に舞い上げられるような空虚もある。こうして真っ白な状態になった頭に、じわじわと現実感が戻り、この作品を思い返して何を思うか。作品は半ば強引に、間接的に、問いかけを残して去っている。
冒頭でも「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」を挙げたが、フランク・ダラボンとスティーヴン・キングの組み合わせであるがゆえに、本作に感動を求めると痛い目に遭うだろう。しかし、これらの作品を並べてみると、どれもエピローグは思慮深く、本作もその点では同じである。何事も微々たる違いで、あらゆる方向に転がっていく。そう思わずにはいられない。本作は凄い。
● 製作代表 : Darkwoods Productions
● 日本配給 : Broadmedia Studios Corporation
● 世界公開 : 2007年11月21日 - アメリカ
● 日本公開 : 2008年05月10日